ある宴会の話

 今日の送別会が面白かった。
 主賓は、以前に別の部署で上司だった人である。本来は、かつての部署のメンバーで送別会をするべきなのだが、問題の多い課長だったので、メンバーたちが嫌がって参加しない。結局、その部署のメンバーでは開催を断念した。
 仕方がないので、別の趣味の仲間でグループをつくった。そこでも何人かのメンバーが二の足を踏んだ。何人かは頼み込むようにして開催にこぎつけた。主催はもちろんワシャである。
 最初は楽しかった。ところが途中から主賓が酔っ払って、他のメンバーにからみ始めたのだ。もともと酒癖の悪い人物で、そこが嫌われる要因の一つでもあるのだが……。
 主催者の責任としてからまれていたメンバーと代わって主賓の横にすわった。別段、からむのは誰でもいいわけで、今度はワシャに罵声を浴びせ始める。目が完全に座っている。
「お前は卑怯なんだよな」
 卑怯という単語は尋常ではない。やんわりと「なにが卑怯なんですか?」と尋ねる。
「全部だ」。
 その答えは卑怯だよ(笑)。それじゃぁ答えていないのと同じだ。
「昔と比べてお前は詰まらないヤツになった……」
 ここから長い説教が続くのだが、要約して書きますね。
「お前はおれの部下になる前、一緒に遊んでいるころには物分りのいい男だったが、某課で課長と係長の立場で出会って以降が、聞き分けのない男に成り下がった。おれの言うことは聴かない、おれのやることにはケチをつける。その後、おれに命令する立場になると面倒くさいことばかり言う。うっとうしくて仕方がない」
 と、まあ、こんなことを繰り返し30分ほど拝聴した。
 少し補足をすると、主賓はワシャよりもずいぶん年上だ。そりゃそうだよね。今年、定年退職なのだから。でね、1年だけこの人の下で係長として働いた。もちろんワシャの下には係員がいて、それらを守るためにも、物分りなんかよくなれない。だから、仕事のやり方、部下の指導の方法などで、よく言いあいをしていた。
 隣の課員からは、「ワルシャワさん、毎日、課長と喧嘩していますね」と言われるほどだ。
 でも、仕事を円滑に回していくためには良くあることだし、ワシャが1年早くこの部署に来ていたことが幸いした。それに、課長の上司の次長が、もののよく見える人だったので助けられた。
 仕事はワシャを中心に回した。部下もよくついてきてくれた。課長とは議論をしながらも、ここぞというところで手柄を立てさせて、面目を保つようにした。
 それでもというか、当然というか、ワシャの勤務評定はひどかった。通常は百点満点の60〜70点が平均なのだが、この課長には40点を付けられた。会社人生で初の落第点をもらった(別にいいけどね)。しかし、その上の次長がカバーしてくれて、平均点に戻してもらった。おかげで事なきを得た。そんなこともエピソードとしてある。
 ワシャも、聖人君子ではないので、ムカムカしていたが、それでもせっかくの送別会を台無しにしてはいけない。嫌々参加してくれた殊勝な後輩もいる。なんとか3時間、笑顔で過ごし、午後9時過ぎに閉会することにこぎつけた。やれやれ。
 でも、おかげで1本日記が書けたので助かったわい。