飲酒運転はいけないけれど

 埼玉県で飲酒運転の一斉検問が実施された。そこで、未明にゴルフに向かう男性が引っ掛かった。就寝前に寝酒を1杯飲んだそうだ。男性はパトロールカーに引っ張りこまれ検査を受ける。例の風船をふくらませるやつだ。その結果、呼気中のアルコール濃度が酒気帯び運転とされる0.15mg以下の0.1mgだったので処分されなかった。男性は飲酒後に床につき、4時間ほど熟睡したという。
 男性が車に戻り、車を発進させようとしたら、警察官たちがあわてて駆け寄ってきて「車に乗ってはだめだ」と言う。その理由は、「酒気帯び運転ではないが、血液中にアルコールが存在する以上、車の運転は危険である」ということらしい。基準である0.15mg以下にも関わらずである。「飲酒後、8時間はアルコールが体内に残るので車の運転は控えてもらいたい」と警察は言う。

 こんなお父さんがいる。
 午後11時に家に帰る。ようやく仕事から解放された。一風呂浴びて湯上りのビールでほっと一息を就く。あー一日のストレスが抜けていく。多くの小心なサラリーマンは、帰宅後の一杯の酒で崩壊寸前の精神を辛うじて支えている。この一杯の酒のお蔭で今夜もぐっすり眠ることができ、明日また仕事に向き合えるのだ。午前0時30分、就寝する。zzzzzz。
 午前6時に起床、そそくさと身支度をして、軽い朝食を食べると出勤のため車に乗る。地方のサラリーマンは自動車通勤であることが多い。エンジンを始動する。
「今日も仕事に頑張るぞ」
 そう決心したお父さんの車のウインドウをコンコンと叩く人がいる。お巡りさんだ。
「ちょっと待ってください」
 驚いたお父さんはウインドウを開けて尋ねる。
「な、なんなんですか、お巡りさん、こんな朝早く」
「この風船を膨らませてみて」
「え、ボク、酒なんか飲んでませんよ」
「いいからいいから」
お父さん、なんだか分からないけれど風船を膨らませ、お巡りさんはその風船を検査している。そしてこう言う。
「はい!ごく微量ですがアルコールが検出されました。車から降りてください」
「え、でも仕事に行かなければいけないんですよ」
「だめです。体内にアルコールが存在します。飲酒後8時間経過しないとアルコールは体外に排出されません。残念でした」
 確かにお父さん、6時間前に飲酒している。体内にアルコールが微量存在するのも事実だろう。しかし、こんなことで本当にいいのだろうか。