柝の音(きのね)

http://www.nikkansports.com/entertainment/news/p-et-tp0-20091119-567292.html
 市川海老蔵と美人キャスターの小林麻央が結婚するとかで大騒ぎになっている。ううむ、またこれで歌舞伎のチケットが入手しづらくなるわい。
 そんなことはどうでもいいのだが、梨園に嫁ぐ麻央ちゃんが「司会業を続けたい」ようなことを漏らしているというが、そりゃダメだ。麻央ちゃんは司会者の仕事を辞めるべきである。なぜなら、小林麻央程度の女子アナならそれこそ山ほどいるが、十三代目市川團十郎の妻は一人しかいないからだ。良きにつけ悪しきにつけ、麻央ちゃんは歌舞伎400年の歴史の中に踏みこんだのである。もう蓮っ葉な美貌と美脚を売り物にして視聴率を稼ぐようなマスゴミ仕事はできない。市川宗家の嫁というのは、そんないい加減なものではないのじゃ。市川團十郎家に沿う多くの一家があり、その一家は部屋子を多数かかえている。それら役者の先には歌舞伎ファンというわがままな巨大な集団がぶら下がっている。その中心に團十郎という名跡があり、その妻があるということを忘れてはいけまへんで。
 十三代目團十郎の妻として、一生を芸道に捧げる決意がなければ宗家の嫡男となど結婚しない方がいい。それに海老蔵こと堀越孝俊くんの女好きは、祖父の十一代目團十郎からの隔世遺伝で筋金入りと考えたほうがいいだろう。今、麻央ちゃんは才色兼備のまばゆいばかりのお嬢さんだが、十年もすれば(それでも綺麗だと思うけど)、今の若さは失われる。そうなった頃に海老蔵さんはどうするんだろう。よき家庭人になっていればいいが、どうも麻央ちゃんより若いピッチピチの女どもに傅かれて脂下がっているように思えてならない。でも、それが梨園に嫁ぐものの宿命なのである。
 この間といってもずいぶん前か……喜寿の坂田籐十郎が若いネーチャンとチョメチョメをしたというニュースが流れたでしょ。役者なんていうものは幾つになってもそんなもので、安穏とした家庭を望むべくもない。麻央ちゃんも大変だと思うけれど、宮尾登美子の『きのね』(朝日文芸文庫)でも読んで梨園の勉強をしてちょうだい。あらすじにちょこと触れると、「團十郎家に女中として奉公に上がった醜女が、御曹司のお手付きとなり子どもを産み、役者の妻となって共に芸に身を捧げ一生を終える」という姿を描いている。涙なくしては読めない女のドラマだった。この女性が孝俊くんの祖母である。麻央ちゃんにもこの人を見習って頑張って欲しい。歌舞伎ファンとして心よりそう思う。