震えている その3

(上から続く)
 ノーベル物理学賞を受賞したアメリカ国籍の中国人、楊振寧さんが中国重慶市で中学生にむけて行った講演の発言である。
「寧拙母巧(不器用でもいい。見せかけのうまさはいらない)。今の中国にはこの言葉が大事だ。世界に広まっている『中国製品は偽物ばかり』という印象を徹底的に変えなければいけない」
 ううむ、楊先生、見事に今の中国を言い当てている。あの国威発揚の中国上げての大イベントの北京オリンピックでも「口パク少女」を出してきて、まったく恥じない国柄である。見た目だけのニセモノに口をパクパクさせて、さも美声で歌っているように表ヅラだけを繕う。そして「なにが悪いアルカ?」と開き直る.楊先生はこのことを言っている。国家の中枢からビジネスまで「羊頭狗肉」になっていると警告している。
 9月29日の朝日新聞にこんなことが書いてあった。
 中国のとある大学で学生共産党員に入党の動機を聞いたところ「人民に奉仕するため」や「共産主義に対する信仰」を抜いてダントツの1位(40%)が「就職に有利だから」だったとさ。このように根っこの部分で共産主義はすでに崩壊している。にも関わらず資本主義の上に共産党という見せかけだけの仮面をかぶせているのが中国である。天安門広場に最新兵器を並べて喜んでいる場合ではない。

「あななたち若い世代から、誠実さを身につけることを始めてほしい。うまく立ち回って得をしても前途はない」
楊先生の言葉に心が震えた。楊先生のような考えかたが浸透していけば、彼の国が本物の国にもどる可能性はまだある。