世襲について その1

 新井えり『名士の系譜』(集英社新書)を読んでいて、はたと膝を打った。
《白仙には、九歳の順吉という養子をもらい受けて、五年後に離縁するという苦い経験があった。順吉は眉目秀麗で動作は敏捷、勉学優秀で誰からも好かれた。一人白仙だけが、少年の心に誠実さがなく、虚偽にも類する言動をすることに不安を覚えて、苦渋の決断を下したのである。》
 白仙というのは森鷗外の祖父である。白仙は養子に入った少年をそう見極め、家から追い出したのだった。それでも順吉は俊才だったので、まもなく他家から声がかかりもらわれていった。しばらくは家に納まって我慢していたのだが、ほどなく養家を捨てて脱藩し、どこかで何者かに斬り殺されたようである。この少年の尻の納まりの悪さを白仙は見抜いていた。
 ワシャが前々から小泉進次郎にもつ不信感というのはまさにこれなのである。彼は眉目秀麗だ。勉強という努力はしてなさそうだが、要領は良さそうだ。言い逃れをする詭弁にも長けている。父親と同じ古いタイプの政治家なら勤まらないこともなさそうだけどね。
 ただ、選挙公示前の対立候補への理不尽な対応、人を見下げたような視線、横柄なしぐさ、打って変わって有力支援者に対する愛想のいい笑顔、初登院の時には、敵将の小沢一郎にも媚びの混じった挨拶をしていた。このことごとくに彼の性格の浮薄さを感じ不安になる。結局、彼に政治を託しても、嫌気がさせば(群馬と山口の世襲議員と同様に)なんの躊躇もなく投げ出すような気がしてならない。
(下に続く)