いやはや~、友達から短歌の添削を頼まれた。それほど得意なわけではないけれど、何冊かの入門書を読んで修正しましたぞ。最初のは「選挙の標語」のような三十一文字だったが、韻を踏んだり、隠し言葉を入れたりして、なんとか短歌の体裁に整え返信をした。
その後、「どうしました?」と確認したら、「ワシャさんに直してもらったのは自分らしくないので元のをそのまま発表しました」という答えが返ってきた。
お~い、あなたの短歌に費やしたワシャの時間を返してくれ~(笑)。
昨日は読書会だった。課題図書は、呉智英『言葉につける薬』(ベスト新書)。この本の内容に入る前に、今朝の朝日新聞「天声人語」に触れたい。書き出しはこうだ。
《第1次南極越冬隊がカラフト犬のタロ・ジロたちを残して、急きょ引き上げる。》
ここからコラムを起こして《昭和基地と観測船、日本との間では深刻なトラブルが起きていた。》と続け、「磁気嵐」にもっていく。「磁気嵐」と言えば先週の「オーロラ騒ぎ」ですわなぁ。やれやれ。
そして結びが《宇宙の神秘、地球のちっぽけさ。そんなことも思わせる天体ショーだった。》んですと。ああ、朝から詰まらないコラムを読んでしまった。オーロラにまつわるファクトを集めてきて、切り貼りしただけの駄文で、呉さんが添削していたらズタボロにされていただろう。
その呉さんの『言葉につける薬』にも南極越冬隊の話が出てくる。「竹製のダッチ・ワイフ」と題されたエッセーである。
これには、メンバーの一人が強く反応した。普段はあまり真面目に本を読んでこない人なんだけど、今回はこの「ダッチ・ワイフ」だの「南極2号」だの、ソロモン諸島の南の「エロマンガ島」とか、バリ島北東部にある「キンタマーニ高原」とかが課題図書の中に散りばめられていたからか、本の内容を詳しく理解していた。得意な分野だったんだね(笑)。
そんなことはどうでもいいのだが、同じ「南極越冬隊」を文章にして、これほどの差が出るとは・・・文章の神秘、「天声人語」のうすっぺらさ。そんなことも思わせる文章対比になった。
話を読書会にもどす。
基本は課題図書に沿って議論を進めるのだが、そこはそれ、ときおり話が脱線する。その中で、やはり「死生観」の話になる。呉さんと哲学者の加藤博子さんの共著『死と向き合う言葉』(KKベストセラーズ)の「あとがき」に加藤さんがこんな言葉を書いている。
《死を考える本書だから、敢えて不穏当なことを書かせていただくが、やがて呉先生にも死が訪れるであろう。だから今のうちにできるだけ多くを語っていただこう、音源も残しておいたほうがいいのではないかなどと、名古屋の弟子たちは話し合っている。》
これが実現した。
5月25日(土曜日)14時00分から安城市図書情報館(アンフォーレ)3階健康支援室・講座室で。ある意味で呉さんの最終講義と言っていい。2日前にも書いたけれど、定員50名で募集をしたら2日で定員をオーバー。急遽、倍の100人に増やした。それもすでに超えている。
あ、今、「急遽」という字を使いましたが、さっき引いた「天声人語」では「急きょ」と書く。常用漢字の中に「遽」が入っていないので、朝日新聞では「急きょ」としか示せない。「急きょ」ってマヌケでしょ。急ぎ遽(あわ)てるから「急遽」なんじゃ。漢字は日本の文化になっている。大切に後世に残していくことも現代に生きる日本人の責務だと思っている。短い「天声人語」の中にも突っ込みどころが満載だ。
呉さんはこれを「言葉狩りの愚劣さ」と指摘されていることを付け加えておく。