ウレタンマットはどこへ

 新幹線に忘れた「低反発腰用ウレタンマット」が諦めきれないので、午前10時になるのを待って「東京駅お忘れ物取扱所」に電話をする。しかし話中だった。その後、何度かけても話中なので、30分おきにかけることにする。10時30分。11時、11時30分、12時、12時30分、すべて話中だった。きっと全国で落し物、忘れ物をしたマヌケな人はワシャを含めてたくさんいるんでしょうね。
 午後1時になる少し前に10回目くらいの電話を試みた。
「トゥルルルルトゥルルルル……」
 通じた!
 電話に出たのは、話し方、声の質などから、60過ぎのJRを退職した再雇用の現場のオジさんという感じだった。少し東北訛りがある。
オジさん「どうしました」
ワシャ「昨日、京都発15時05分のこだま666号の4号車、座席番号は3a若しくは4aだったと思いますが、そこに忘れ物をしました。忘れ物はタテ30?pヨコ40?pくらいの大きさでフレーの布にカバーされた低反発ウレタン製の腰用当てマットです。因みにわたしは三河安城で降りました」
 ワシャの完璧な説明でオジさんは理解したようだ。
オジさん「わかりました。ちょっとお待ちください」
 待つこと2分。
オジさん「お待たせしました。残念ながら該当物件の報告は届いておりません」
 残念!
 ワシャの「ウレタンマット」は東京駅まで辿りついていなかったようだ。多分、浜松あたりから混みだすから、そのあたりであの席に誰か座ろうとして、忘れ去られた「ウレタンマット」を見つけたんだろう。人が忘れていったものだから少し不気味だけれど、使ってみると腰にフィットして調子がいい。腰痛持ちなら間違いなく「こりゃぁ便利だ」と思うアイテムである。それにワシャが使っていたので高貴なバラの香がしたのかもしれない。だから誰か持って帰っちまったんでしょうね。さようなら〜ウレタンマットくん。