怒られ力 その1

 ワシャは子どもの頃、生意気なガキだった。だからもう日がな一日、教師たちに怒られていた。怒られ続けて慣れてしまったせいか、かなり無茶苦茶な罵声でも冷静に受け止める耐性が身についたのじゃ。
 就職して5年目くらいだったかなぁ。いかがわしいオッサンから社に電話があった。何か変な物を売りつけようという押し売りのような話だった。電話に出て少し経てば、そういう人だということがピーンときた。だから、途中から言葉使いは丁寧だが、どこか相手をバカにしたような受け答えになっていたんだと思う。さすがに向こうもバカではなかった。電話口でものすごい罵声を浴びせてくるではあ〜りませんか。
 でもね、ワシャの方に耐性が備わっているものだから、慇懃無礼な応対をその後も続けた。
「てめえ!△☆■×▲▽☆☆★!!」と受話器の向こうでオッサンが絶叫して、そして「ツ―――――」となった。ワシャは一軒落着とばかりに、受話器を置いたのだった。
 ところがこの話は終息していなかった。
(下に続く)