読書が広がっていく その2

(上から続く)
 近所の本屋にはなかった。近所のブックオフにもなかった。隣町の大型書店にもない。その町にはブックオフが2軒あるのだが、1軒目にはなかった。しかし、2軒目に、あった。ラッキー!もちろん速攻で購入する。帰り道に信号で止まるたびに読書に勤しみ、家に着く前に読み終わった。ううむ、宮城谷さんの言うとおりすごい作品だった。これは勉強になったわい。
 あ!しまった。ネットで注文していたんだったっけ。同じ本が2冊になってしもうた。仕方がないので、また、友達のパセリ君にでも買ってもらおうっと。
 この短編集の表題にもなっている「暗殺の年輪」という話も面白かった。主人公の母に関する描写である。
《母が男を見送って、蝋燭の灯で足もとを照らしてやっている光景。その記憶の中で、母は密夫を送り出す淫らな女の香を、隠すこともせず身にまとって立っていたのである。》
 池上遼一の時代物の作品に登場する成熟した女の姿を髣髴とさせる描写だ。そうなると池上コミックを読みたくなる。本棚から、池上遼一『近代日本文学名作選』(小学館)を引っ張り出してきて再読した。
 むむむ……恐るべし池上遼一、凄い漫画家だ。今回、読んで気がついたのだが、なんと、池上さん、成熟した女と未通娘(むすめ)とを描き分けている。「お勢登場」の主人公お勢と「松風の門」に出てくる小次郎の妻うめの腰の描き方が微妙に違うのである。そこまでこだわるか、池上遼一
 ここで小次郎の妻のうめが健気だったので、原作を読みたくなった。原作は、山本周五郎の短編小説である。山本周五郎も何冊か持っているので探したのだが「松風の門」が収録された短編集はなかった。ないとなると俄然読みたくなる。さて、また本屋に探しに行くとするか……って、どんどん広がっていくばかりできりがないのだった。やれやれ。