さらば涙と言おう

 先日、うちの社員が泣いた。その現場には居合わせなかったのだが、「今、手がけている仕事ができない」と、泣いて上司に助力を求めたのだそうだ。
 ううむ、仕事ができないのは仕方がない。できないから上司に相談するのもしょうがないだろう。しかし、仕事で泣いてはいけない。とくに30代の男がその程度のことで「悔し涙」を見せるべきではないと思っている。だから、機会を見つけてその社員に、人前で泣くことの甘さを指摘しておいた。

 ワシャは中学1年の時を最後に人前で涙を流さなくなった。涙腺が枯渇したわけではない。少し大人になったので「悔し涙」は人に見せるものではないということを学んだのである。その証拠に「悔し泣き」以外はビービー泣いている。東映の『男たちの大和』を観た時なんぞ、のっけから涙が止まらず2時間泣きとおした。数年前に悪友に突然死なれた時も悲しかったなぁ。そう考えれば、結構、泣いているか……でもね、やっぱり、悔しさは胸の奥に秘めて捲土重来を期せばいいと思っている。だから、仕事で流す涙は持ち合わせてはいない。

 そうそう、一昨日も思わず泣いてしまいましたぞ。新聞広告で『最後のパレード ディズニーランドで本当にあった心温まる話』(サンクチュアリ出版)の紹介があって、本の内容が一部抜粋してあった。そこを読んだら思わず目が潤んでしまった。これは「買い」だと思い、すぐに注文したのだが「現在品切れのため、お取り扱いできません」だとさ。新聞広告を打つんだからさ、ちゃんと本を準備しとけよ。
 同じことが岩波書店のPR誌でもあった。『嬉遊笑覧(五)』(岩波文庫)が新刊案内に出ていたので、早速、「e−hon(全国書店ネットワーク)」で注文するが、おっと、これも注文できない。これはPR誌の下に小さく「17日発売」と書いてあったので、ワシャの勇み足だった。
 それにしても、欲しいと思った本が注文できないと悔しー!思わず悔し涙が出そうになったがぐっと堪えたのであった。めでたしめでたし。