エコという欺瞞

「オール読物」1月号に、「エコブームはどこへ行く!?」と題して池田清彦生物学者)、篠田節子(作家)、福岡伸一生物学者)が鼎談をしている。
 以下はワシャが気になったことろ。
《そもそも環境問題というのは、一つのことばかり一生懸命やると副作用が出てくるという話なんですよ。》
《エコブーム自体が、かなりいかがわしいでしょ。みんなが本質的なところを考えるのが面倒くさいからなんとなく「地球にやさしい」なんて空気を作っているけど、でも地球からしたら別に人間が滅んだって痛くもかゆくもない》
《個人が何をしても、たいして効果はないんだよね。国が主導して新しい技術を開発していかないと根本的な問題は解決しない。》
《技術的な問題はありますが、中央集権的なエネルギーのあり方から、いかに分散的なあり方に変わっていくかということが、本当のエコロジー
《大気中のCO2を減らす理想的な方法は、養老さんも「植物にお願いするしかない」と言ってました》
 池田さんも福岡さんも、その著書を拝見する限り、とても客観的な視点を持つ冷静な科学者だと思っている。名前が登場する養老さんは一度じかにお話をお聴きしたことがあるが、言っていることは至極真っ当だった。

 それに比べ、地球の危機を声高に叫ぶ、いわゆる「扇動本」は主観的かつ硬直的な内容で、何冊読んでも納得できる説明にあたったことがない。例えば、田中優地球温暖化/人類滅亡のシナリオは回避できるか』(扶桑社新書)では、屋久島の縄文杉は、気温が変動するたびに日本列島を北へ南へうろうろと歩き回っていたということになる。そんなことはあるわけがない。
 江原達怡『加速する温暖化・砂漠化 死に向かう地球』(現代書林)などもひどい本だ。「……かもしれない」「……という」「……だろうか」「……そうだ」という伝聞ばかりが散りばめられ、その聞いた話の間を「……だ」という断定で埋める。文末に「だ」の多い文章は悪文だ(←この「だ」ね)。根拠のない聞いた話を自分の意見として断定しているだけなのじゃ。
 そして地球滅亡論者の特徴としてIPCCの報告を鵜呑みにしていることが挙げられる。まぁそれしか拠り所がないから仕方がないのだけれども、この報告書がかなり偏ったまがい物であることが、環境関連本を300冊くらい読んでようやく解ったぞなもし。