座右の銘

「あなたの座右の銘は何か?」と問われたら、ワシャは「報恩」であると答える。「恩に報いる」いい言葉ではないか。
 この言葉は、日本少林寺拳法初代館長の宗道臣からもらった。もらったといっても直接もらったわけではなくて、少林寺拳法の教義として、道場に通うたび練習前に復唱させられていつの間にか身に着いてしまった。
「我等は、魂をダーマよりうけ、身体を父母よりうけたることを感謝し、報恩の誠をつくさんことを期す」というものだ。これは、4つ折定期券サイズのの身分証明書の中に「誓願」「道訓」などとともに「信条」として書かれている。
 ワシャは少林寺拳法を15歳の時から始めているので、こんな抹香臭いフレーズをつるつる顔のリーゼントにいちゃんが、甲高い声で唱えていたんだね。でも、毎日、唱えることで本当にこの言葉が「信条」になってしまった。
 ダーマというのは、ダルマのことである。狭義にはダルマ大師のことなのだが、ここでは大宇宙というような意味になっている。
「魂は大宇宙から、肉体は父母からもらったことに感謝し、その大恩に報いるために修行を積んで他者のために役立つ人間になろう」というようなことだわさ。
 ここから派生して、他者から受けた恩にも報いていかなければならないと思うようになって、「犬とワルシャワは3日付き合ったら恩を忘れない」といわれるようになった(なんのこっちゃ)。
 顧客サービスで業界のトップを走るザ・リッツ・カールトンホテルが採用している「クレドカード」というものがある。これはホテルの経営理念を記載したカードを従業員全員が携帯し、常にそれを復唱することでクオリティの高いサービスを顧客に対して提供をするというものである。これなんかも、少林寺拳法の「信条」と同根のもので、日々の復唱がメンバーへの理念の刷り込みになっている。
 話が外れたが、子どもの時に刷り込まれた「信条」は生涯ついて回るものなのかもしれない。
 ワシャの基本理念は荀子性悪説である。だからニュースなんかもまず鵜呑みにせず疑ってかかる。しかし、その心の核には「報恩」という素直な部分があることも、また真実なのである。