いやー東京から戻ってまいりましたぞ。
秋の東京を堪能しようと思ったのじゃが、暑かったわい。銀座から東銀座まで歩いただけで汗だくだくになった。鋭い方は「東銀座」でピンとくるものがあるだろうが、その話はまた別の機会にする。
行きの新幹線での話だ。午前中に仕事が入ってしまったので、昼過ぎの「こだま」に乗った。この時間帯はガラガラなんだね。ワシャは必ず2号車の後ろから5列目のD席に座ることにしている。もちろん昨日もその席に座った。掛川までは快適だった。論文の構成も進んだし、読書もできた。しかし、掛川で乗って来たオバさんがワシャの後の4列Eに座ってみたらし団子を食い始めたからたまらない。焦げた砂糖醤油の香ばしい臭い(敢えて「臭い」と書く)が辺り一面に広がった。ワシャなんかすぐ前なのでモロに鼻梁を刺激される。みたらし団子の臭いは主張がありすぎるんですな。そのおかげで読書に集中できない。そのオバさんがニッチャニッチャ言わせながらみたらし団子を食い終わるのをひたすら待つしかないのである。
次の悲劇は静岡から乗ってきた。40歳前後と思しき女性が3人、車両はガラガラだというのにわざわざ5列ABCに陣取ったのだ。座った端から速射砲のようなおしゃべりが始まった。とくに一番性能のいい重機関砲が窓側だからたまりまへんで。剥き出しの砲口がこっちを向いているのである。もう集中なんてできない。仕方がないので荷物をまとめて逃げ出しましたがな。
最後の悲劇は熱海で襲来した。四十がらみのオジさんだ。歳格好からいけばワシャと同じぐらいだろう。そのオジさんが缶ビールを片手に仲間と乗り込んできた。座ったのはワシャのナナメ右前方、一列の向きを変えて楽しい旅行気分を味わおうということらしい。
「ふとんがふっとんだ、ガハハハ」
「この付近に布巾はないかい、ガハハハ」
「ここは何処でしょう?熱海!あったみー」
なんなんだ、このオヤジギャグのオンパレードは。もう逃げ場所はない。前門のオジさん後門のオバさんだ。もうこうなったら不貞寝するしかない。ワシャはブラインドを手荒く下ろして目を閉じたのだった。
「ギャー!」
件の缶ビールオジさんの悲鳴が響いた。目を開けてオジさんの方を見た。オジさん、缶を取り落として床にビールをぶちまけてしまったのだ。あらららら……
車両が傾いているためにビールの細流が通路を越えてワシャの方にやってくるではあ〜りませんか。みたらし臭にビール臭、オバさん速射砲にオヤジギャグ、ワシャは何か悪いことでもしたのだろうか、教えて、神様!