落語三昧

 夕べも落語会に行く。瀧川鯉昇(りしょう)、春風亭柳橋(りゅうきょう)、春風亭べん橋、瀧川鯉斗(こいと)など。
 前座話で鯉斗、演目はこの間、桂ひろばで聞いた「動物園」。とある男がアルバイトで動物園のライオンに成りすますことになる。ライオンに成りきっていると、虎が檻の中に入ってきて決闘をすることになる……という噺。先の桂ひろばは健闘していたが、鯉斗は全くの素人で噺にならない。暴走族の頭をやっていたと前振りで言っていたが、だからだろう、教養が感じられない。それに前座あたりでは必須の実直さがない。そう長持ちしないだろうね。
 べん橋は「引越しの夢」である。二つ目の三年目。芸がまだまだ粗い。噺の後に「奴さん」を踊ったが、腰がきまっていない。まだまだ精進が必要なようだ。
 鯉昇は落語界でも有名な勉強家である。だから安心して聞くことができる。演目は「湯屋番」で、額の禿げ上がったどんぐり眼の鯉昇が、美貌のお妾さんを演じるんだが、この落差に会場は大爆笑だった。それでも噺に引きこまれてくると鯉昇が綺麗に見えてくるから落語というものは不思議な芸でござんすねぇ。
 中入り、粋曲をはさんで、トリが柳橋、演目は「お神酒徳利」。この9月に八代目を継いだばかりで、まだ柏枝(はくし)のイメージが強い。昔から地味な噺家だったが、柳橋襲名で一皮むけるといいが……

 夕べは大入りだった。ワシャはとても神経質なのじゃ。周囲の人に気を使うタイプなので、混んでくると身の置き所に困ってしまう。でもね、遅くから割りこんでくる客は、厚かましいったらありゃしない。遠慮せずにぐいぐいと体をねじ込んでくる。ワシャの右前にもぐりこんできたオバさん、おいおいあんたのケツがワシャの膝に当たってるって。左前に陣取るオジさん、足を踏むんじゃないよ。隣りのジイさんは、太股をくっつけてくるんじゃない!