東京散歩―早稲田通りから神楽坂通りへ―

 散歩なんていう生易しいものではありまへんでぇ!早稲田通りをこけつまろびつとにかく西へ。走りながら見つけたコンビニに突入し、サンドイッチと朝バナナを手にするとレジに向かった。たまたまワシャの前にオバさんが清算をしている。1円玉をカウンターに並べだしたではないか。「急いでくれー!」と口には出さず心で叫ぶ。店員も要領が悪い。オバさんが銭を数えている間に品物を袋に入れんかい!日本人はいつからこんな愚図になっちまったんだ。
 オバさんがどいた。カウンターにお金を置くと「袋はいらない」と言い残し、ワシャは再び歩道を走る人となった。オジさんが走りながら朝バナナをチュウチュウ吸っているというのは絵になりませんなぁ。さすがにサンドイッチだけは走りながら食うと喉に詰まってしまうので、牛込橋で立ち止まって食しましたぞ。そして再び走り出すワルシャワだった。(ワシャはメロスか?)
 牛込橋から神楽坂は登りになる。運動不足のワシャにはきつい勾配だ。しかし、そんな甘いことは言っていられない。セリヌンティウスは待っている。
《濁流は、メロスの叫びをせせら笑うごとく、ますます激しくおどり狂う。波は波を飲み、巻きあおり立て、そうして時は、刻一刻と消えてゆく。》
 毘沙門様も八幡様も楽しみにしてきたけれど、大村益次郎が誤算だったわい。わき目も振らず神楽坂を会場に向かうのじゃぁぁぁぁ!
 ここで一句、「冬めいて 毘沙門堂の 影長し」……違う!俳句など捻っている場合ではない!急げ!急げ!
 地蔵坂に左に折れるところで、坂から降りてきた和服の女性と接触してしまった。前を確認せずに曲がったワシャが一方的に悪い。女性は転んだはずみに鼻緒を切ってしまった。「ああっ、ごめんなさい。ワシャの肩に掴まっていてください。今、鼻緒を直しますから」……なんてことがあるわけないじゃないか。こんな妄想に浸っている暇はないのじゃ。
 11時57分、日本出版クラブ会館着、3階まで駆け上がって受付前が12時ちょうどでしたぞ。はぁはぁはぁ……
 ふと気がつけば、顎のところにサンドイッチのマヨネーズが付いておりましたが、スタッフの皆さんには気づかれなかったようでごじゃりまする。しめしめ。