彼岸に読書 その1

 お彼岸なので家族でお墓参りに行った。ワルシャワ家先祖累代の墓は、町外れの共同霊園の中にある。
 町の中は暑かった。でもね、墓地の周りは田んぼばかりで、黄金に染まった野を渡ってくる風は秋色だった。ワシャは早速、水場に行って桶に水を張り、柄杓を一本突っ込んで墓所に行く。周辺に生えている雑草を抜いて、ごみを整理し、水鉢、花立て、香立ての中もきれいにする。墓石に水を打って、汚れを取り、墓花を替える。線香とロウソクを立てて出来あがり。再び水場に戻って手を洗い、墓前で礼拝する。
「観自在菩薩、行深般若波羅蜜多時……」
般若心経から始めた。朗々たるワシャの声が高き天に昇っていく。続いては妙法蓮華経じゃ。
「世尊妙相具 我今重問彼 仏子何因縁……」
 おまけに修証義もやってまえ。
「生を明らめ死を明らむるは仏家一大事の因縁なり……」
 いやー、修証義は長い。第一章の総序から、懺悔滅罪、受戒入位、発願利生、行持報恩まで誦していたら日が暮れてきた。最後に、釈迦如来真言「のうまくさんまんだぼだなん ばく 喝!」と叫ぶと家路についたのであった。
(下に続く)