人生は一つだけじゃない その2

(上から読んでね)
 ワシャの会社に幹部OB会というものがある。退職した歴代の幹部が名を連ねていて、定期的に懇親会を開催したり、バス旅行に行ったりしているという。この会、けっこう盛況で、出席率も高いと聞く。
 先日、そのバス旅行があった。世話係として会社の人事担当者も随行している。帰って来た人事担当者と雑談をしていて、こんな話が出た。
人担「今年もほとんどのOBが来てくれました」
ワシャ「よかったね。でも来なかった人もいるんだ?」
人但「ええ、病気とか所用が重なってとかで2〜3人、それから全然出てこない人が2人いますね」
ワシャ「全然、出てこないOBもいるの?」
人但「はい、元専務のKさんと営業部長のTさんです」
 およよ、二人ともワシャとはとくに仲のいいOBではあ〜りませんか。

 後日、両者に合う機会があったので、「何故、OB会に参加しないの?」と尋ねた。現役の頃からずっと趣味で絵を書いていたKさんは優しそうな笑顔を見せてこう答えた。
「一人で絵を書いているほうが楽しいもの、それに頭の固い年寄連中とは話が合わないんだ」
もう一人のTさんは我社でも名うての豪腕部長だった人で社長も役員も一目を置くほどの人物だった。酒席も好きでOB会も率先して出ているのかと思っていたのだが、豈図らんや、彼はこう断言した。
「OB会?バカばっかりだから面白くねぇんだ。だから行かない」
 Tさん、今は大好きな山野草に囲まれて余生を送っているとのこと、お見事。