21円の罪

 7日、熱海市来宮神社の賽銭箱から現金21円を盗んた61歳の無職男性が逮捕された。毎日新聞はこの極悪非道な犯人を糾弾するために、その氏名を公表した。
 え?これって名前を全世界にネットで晒すほど極悪非道の犯罪なのかな??
 山口県光市で本村弥生さんと夕夏ちゃんを殺害した19歳の鬼畜の名前は公表されなかった。もちろん毎日新聞も公表しなかった。
 全国で殺人を犯す少年たちは、どんなに残虐でも残酷でも、その名は秘されたままだ。
 しかし、冒頭の61歳の賽銭泥棒は19歳の巫女と22歳の出仕に追い掛け回され、取り押さえられ、警察に突き出され、名前をネットで晒されたのである。確かに賽銭泥棒は悪い。犯罪には違いない。でもね、ここまで苛まれなければならないほどのことだろうか。
 取り押さえたヒーローは少林拳世界大会3位の猛者である。腹を減らした61歳のオッサンが勝てる相手ではない。抵抗すらできなかっただろう。この事件を毎日新聞の記者は美談のように報じているが、本当にそうだろうか。
 実はワシャも少林寺憲法の達人じゃ(笑)。もしワシャがこの犯罪現場に居合せたならばこうする。
「ドロボー!」という巫女の声を聞きつけると、ワシャは韋駄天の如く犯人を追いますな。そして捕まえるところまでは同じなのだが、ここからが違う。
「オジさん、盗んだものを返しなさい」
 オジさんはワシャの迫力に21円を巫女に返す。ワシャはおもむろに財布から1000円札を出すと、それをオジさんの手に握らせて、こう言う。
「これで何か暖かいものでも食べなさい」
 オジさんはワシャの手を取って、「およよ」と泣くでしょうね。
「もう賽銭など取ってはいけないよ。天に軌道のある如く、人それぞれに運命というものを持っております。おいちゃん、運命に負けちゃあいけねえよ」
 腹をすかせたオジさんは何度も礼を言いながら神社の参道を下っていくのでありました。完。

 なぜ、少林拳の達人はオジさんを警察に突き出すまでしたんだろうか。それほどの悪事なのだろうか。「慈悲」という言葉を知らないのか。毎日新聞の記事を見て、世知辛さを2度味わった。