昨日も雨が降っていた。上下モスグリーンのカッパにやはり同じ色の75cmの傘という出で立ちで流星号をケッタくり仕事帰りに本屋に寄った。本屋の駐輪場に流星号を停めて鍵をかう。ワシャの町は田舎町だが、泥棒がけっこういるので用心用心。
傘を傘立に突っ込んで店内に入る。おっと地元の『市史』が出ているではありませんか。即購入。
その他に
『あと10年で地球を救う12の考え方』(洋泉社MOOK)
『手塚治虫傑作選「瀕死の地球を救え」』(祥伝社新書)
『これ一冊で中国の世界戦略がわかる!』(青春出版社)
八幡和郎『47都道府県の名門高校』(平凡社新書)
M.J.アドラー/C.V.ドーレン『本を読む本』(講談社学術文庫)
を買う。
さて、家に帰って白波でも酌みながら本でも読むべい、と思って店から出る。ありゃりゃりゃ?
「都会で〜は、自殺する、若者が〜増えている・・・・・・」
傘立に傘がない。もちろん他の人の傘はある。ワシャの傘がない。「やられた」と思ったが、まあ雨用のフル装備なので傘がなくたって家までもどれるので、すっぽりとフードを被ると雨の中に飛び出した。
駅西の市営駐車場の裏通りを流星号は軽快に走っていた。その時、モスグリーンの傘をさしてタバコを吸っている男を追い越した。煙が臭い。横目でその若者を見る。明るいグリーンのジャケットを着た貧相な顔立ちのヤツだった。「どこかで見たぞ」ワシャはその男とどこかですれ違っている。
(考え中考え中考え中)
あ!思い出した。あいつさっきまで本屋の雑誌コーナーにいたヤツだ。この結論を導き出す間に流星号は30mほど走ってしまった。ワシャはもう一度、緑野郎を確認するべく流星号を停めて振り返った。
男はワシャを見ていたのだ。本屋で上下モスグリーンのワシャの格好も目立っていた。ワシャが自転車を停めたのを見て、野郎も立ち止まった。
「おい!」
と、ワシャが呼びかけると男は現在の状況を把握したのだろう。あわてて道路から脇の植え込みに消えた。
やっぱりあいつが犯人だ。ワシャは流星号に再び跨って、30mを漕ぎ戻る。しかし本を買い過ぎた。『市史』が重い。もたもたしながら男の消えたところまで戻ったのだが、もう泥棒野郎の姿はどこにもなかった。家並の隙間を裏通りまで抜け逃げたようだ。さすがに人の敷地に侵入してまでの追跡は止めた。傘も古かったしね。それにワシャの傘の柄のところにはダンゴ虫の強い呪がかけてある。だから柄を握った泥棒の指は間もなくダンゴ虫に変わってしまうのじゃ。ウヒヒヒヒヒ……