ラサへ

 ワシャの大好きなコミックに村上もとか『龍RON』(小学館)がある。押小路龍(おしこうじりゅう)という若者を中心にして昭和の動乱期に生きた男たち女たちを描いた壮大な歴史ドラマだ。全42巻、最終巻は日ソ不可侵条約を一方的に破棄したソ連軍が満州に雪崩込むところから始まる。今も昔も共産主義者は嘘つきだ。
 満州に住む在留邦人の退路を断つようにソ連の大軍団が満州南部に侵攻する。その動きを逸早く知ることにできた日本軍のトップ官僚どもは、150万の同胞を見捨てて己が家族だけを限られた列車に特権的に乗せて脱出を図っている。今も昔もエリート官僚は卑怯だ。
 そんな大混乱の中、龍は愛する妻子とともに飛行機で新京(長春)を脱出する。満州上空ではソ連機に追われ、中国上空では米軍機に攻撃されながらもなんとか逃げ延びることができた。そして到着したのがチベットの首都ラサである。龍とその家族を受け入れてくれたのがダライ・ラマ14世だった。
 龍の乗った飛行機がラサに着陸しようとしている。銀色の機影の向こうに荘厳なポタラ宮が見える。龍はチベットでようやく安住の地を見つけるのだった。
 まぁそんな物語なんですな。だからワシャはチベットに肩入れしてしまうのじゃ。

 今日の朝日新聞の「私の視点」に早稲田大学中国人講師の論評が載っている。論旨はこうだ。
「1年前に禁止されたばかりの農薬は残留があるのがむしろ当たり前だ。マスコミは派手な報道で中国食品への不安を扇動している。日本だって昔はバッシングされていたではないか。五輪開催は中国人の誇りだ。北京オリンピックに絡めたような、懐疑的、悪意的な発言はいかがなものか。兄弟のような隣人を大事にしてほしい」
 ふう……この人、残留農薬が当たり前だとほざく。なにをとち狂っているのか。幼い子どもが死にかけたのである。報道が足りないくらいだと思っている。
そして五輪開催は中国共産党の面子でしょ?兄弟のような隣人と言われてもねぇ。その隣人は大量破壊兵器の照準を日本に向けているし、潜水艦は我が物顔に日本の領海内を闊歩しているではないか。チベット問題では報道管制を敷き、中国政府のプロパガンダのみを垂れ流している。そんな国のどこをとらえて仲良くしろと仰るのかにゃ。
 
 龍は架空の人物だ。しかし、今、チベットではチベットを愛する多くの龍が命がけで中国の非道を国際社会に訴えている。どうにかならないものなのだろうか。