誕生日

 今日はワシャの誕生日だ。ウソです。本当はワシャの尊敬する岡本太郎の誕生日なのじゃ。
 ずいぶん昔、途方もなくどでかいこの人の作品を見上げた記憶がある。大阪万博のお祭り広場でのことだ。
 腹に不細工な顔をつけた白いペンギンが羽を広げているような「太陽の搭」、その第一印象は「なんと奇抜な造形であることか」だった。「この芸術にはついていけない」とも思った。なにしろ岡本作品は個性が強烈過ぎて、脆弱なワシャの精神が船酔いを起こしてしまう。だから南青山の「岡本太郎記念館」にも足を運んでいない。
 作品が鑑賞できなくて、岡本太郎の何を尊敬しているのかって?それはね、この人の生き様なんですね。
 ここに彼の著書『自分の中に毒を持て』(青春出版社)がある。その中に、岡本太郎という天才的な個性が小学校というシステムの中で絶望的に叩き潰されるエピソードがある。小学1年生で4つも学校を変わったというから尋常ではない。
 しかし、岡本は叩かれても叩かれても頭を引っ込めず抵抗し続けた。岡本は言う。
《誰でもが、あえて出る釘になる決意をしなければ、時代はひらかれない。ぼく自身は前に言ったように、それを貫いて生きてきた。確かに辛い。が、その痛みこそが生きがいなのだ。》
 ワシャも岡本太郎ほどの上等の突出した釘ではないが、微妙に突き出た釘だった。だから、岡本の生き様を知った時、暗闇に灯明を見つけた思いがした。

 2月26日の花は、福寿草である。新年を言祝ぐ花で幸せの似合う花だ。花自体には少し毒があって、病魔除けにもなるという正義の花だそうだ。