神経根造影およびブロック診療(完結編)その1

 6分間の闘いは終わった。ワシャは台の上で汗だくになっている。看護婦さんにガーゼを当ててもらう。ついでにパンツもずり上げてもらった。
「それでは診療台を立てますので、バーをしっかりつかんでください」
 腰から足にかけての激痛は消えている。しかし軽い痺れがある。台が立ち上がって静止すると、車椅子が用意されワシャはそれに座らされた。冒頭にロッカーまで案内してくれた看護婦さんがやって来て、ロッカーの鍵を持っていった。靴を取りに行ってくれたんだな。
 その看護婦さんが靴を手にあわてて戻ってくる。
「靴しかありません。着衣が見当たりません」
 かなり焦っている。
「そこにありまんがな」
 と、ワシャは部屋の隅のバスケットを指差す。ワシャはロッカーからずっとビニール袋に詰めこんだ着衣一色を持って移動していたのだ。
「これを持って歩いていたんですか?」
「はい、2月20日の日記の中ほどを読んでくださいよ。看護婦さんがそう言っているじゃあ〜りませんか」
「あらごめんなさい。言いかたが悪かったわね。でも、大きなビニール袋を抱えてロッカーに靴だけ入れた人はあなたが初めてですよ」
 と言って、看護婦さんは笑った。ワシャもワシャだけだと言われて、なんだか嬉しくなった。
(下に続く)