風のガーデン

 フジテレビ系で放送されている倉本聰の「風のガーデン」が佳境に入っている。全11話の10話目が昨夜だった。この作品は、ドラマの最後に確実に「死」というものが横たわっている――それは主人公の「死」であり、これが遺作となった緒方拳の「死」でもある――のが解っているので、見る側には少し辛いドラマになるだろう。
 主人公のスケベな医者(中井貴一)の病状は悪化していく。病気を自覚した医者は東京から、子どもたちの住む富良野に帰ってくる。しかし、かつて住んでいた家までは戻れない。だから、長男(神木隆之介)の働く「風のガーデン」の見える林の中に、キャンピングカーを止めて、そこで寝泊りをしていた。
 医者は膵臓ガンの末期で、常に激痛に苛まれている。しかし、ずっと離れていた子どもたちになんとか罪滅ぼしをしようと、――少しでも一緒の時を過ごそうと――痛みを隠しながら「死」と向き合っていた。
 昨日のラストは、主人公の医者が激痛を止めるために、友人の医者に硬膜外ブロックを施してもらっているシーンだ。
 キャンピングカーの狭いベッドに主人公が背中を出して横たわっている。友人がその背に太い注射針を打ちこむ。主人公は目を閉じてその痛みに耐えている……

 そのシーンを見ていて、ワシャの脳裏には今年の2月に施術を受けた「神経根造影およびブロック注射」を思い出しましたぞ。ワシャの背中に主人公と同様の太い注射が打ちこまれた。そして薬液を注入する6分の間、激痛に襲われる。この痛さはワシャの今までの人生の中でもとびっきり痛かった。
 6分間の施術が終わり、精も根も尽き果てたワシャは施術台の上でしばし動けなかった。すると年配の看護婦さんが近づいて話しかけてくる。
看護婦「大丈夫ですか」
ワシャ「大丈夫じゃないです」
看護婦「痛かったですか」
ワシャ「痛かったです」
看護婦「でもね、こんなのは出産に比べたら大した痛みではないんですよ」
ワシャ「出産より痛くないって言ったって……ワシャは出産したことがないのでわかりまへん!」

 今日の話は、「風のガーデン」を見て、痛いブロック注射を思い出したというおそまつな話でござった。ご免。

 あ、今日は小津安二郎忌だった。