浅草界隈

 コーヒーマンは上野の山を降りて台東区役所の北の道を浅草寺に向って歩いている。江戸から明治にかけてこの辺りは寺町だった。百を超す僧院が密集していた。今でも東本願寺をはじめとして寺は多い。だが、周辺の建物が高層化して寺を隠してしまっているので、寺町の風情はありまへんなぁ。
 そうこうしておりますってぇと、合羽橋道具街に差しかかります。そこを越えまして雷門通りに入ります。すでに午前10時を過ぎておりますので、観光客もどっと繰り出しております。その連中の賑やかなこと……
「#&@〇▲□×%%*?」
「★☆♪♭##$■◎●¥!」
「@▽▲♪&&⇒○」
 周囲はほとんど外国人なのじゃ。欧米人、中国人、アラブ人、アフリカ人……凄い、円安の影響がこれほどひどいとは思わなかった。浅草一帯はニューヨークのようになっている。
 およよ、頭をスカーフですっぽりと覆った褐色のご婦人が、観音堂の前で線香の煙を頭に当てている。
「いいのかー!コーランに背いていないのかー!」
 仲見世通りでは中国語を話す若者が、神風の鉢巻を買って行った。ずいぶんと民間の友好は進んでいるようだ。ぜひ、神風鉢巻を締めて天安門広場を闊歩してもらいたいものですな。
 太っちょの白人おばさんに、体当たりを食らうし、韓国人のチビッコ新選組には向う脛を切られるし、もう、むちゃくちゃでごじゃりますがな。
 だめだ。これだけ大量の外人に囲まれていると、外人に中ってしまう。危険を感じたコーヒーマンは仲見世通りから外れ、六区のほうに避難する。もちりん、こっちにも人間はワンサカ居るが、圧倒的に日本人が多い。ほっと一息ついていると、古本屋があった。これは天恵、さっそくエネルギーチャージをするのだった。(つづく)