初詣

 ワシャは郷土の英傑の徳川家康が好かん。戦国大名の中でもどちらかといえば友達になりたくない部類に入る。前半生の延命するためにひたすら権力者に平伏してゆく卑屈な姿勢も好ましくないし、権力を握った晩年に、政敵を徹底的に陥れていく非情さズルさが嫌いだ。
 嫌いは嫌いなのだが、あの英雄でも天才でもない男が乱世を生き抜いて、最終的に最高権力者まで登り詰めた強運については尊敬に値すると思っている。
 昨日、所用で岡崎に出掛けた。そのついでに家康の幸運の万分の一にでもあやかりたくて岡崎城内にある龍城神社に参詣したのじゃ。これで宝くじが当たれば儲けものなので、ええい、思いきって大枚をはたきまんがな。家康はん、見ておくれやっしゃ、ワルシャワでっせ、よろしゅう頼んまっせ、行きまっせ、入れまっせ。ヒョーイ。
 ワシャの浄財が手を離れて賽銭箱を目指してヒラヒラと飛んでいく。その時、ワシャはある重大なことに気がついてしまった。なんと年末ジャンボを買ってなかったのだ。うわー、返せ!戻せ!おつりをくれー!
 でもね正月五日の岡崎城は静かでよかったですぞ。国道1号沿いの駐車場に停めて、大手門を潜り、二の丸を散策し、天守を北側から見上げる位置にある持仏堂曲輪を経て本丸馬出しに向う。そこは深い空掘沿いの回廊になっており、この堀が清海堀と呼ばれる中世の城郭遺構である。

 岡崎城では戦国の歴史に思いを馳せ、清々しい気持ちに浸った。しかし現実の世はなんとごみごみしていることか。帰路のこと、田園風景の中を貫く県道を岡崎から名古屋方面に走ったのだが、車窓の風景の小汚いこと小汚いこと。土台の景観は家康の頃と大きな差はない。田地の中に集落が点在したのんびりとしたものである。 許せないのは道路沿いにびっしりと建ち並んだ「パチンコ屋」、「サラ金」、「中古車屋」などのけばけばしい大看板だ。これでいいのか?日本の風景は・・・・・・
 己の命を賭けて守りとおした領国のこの浅ましさを家康が目の当たりにしたならば、道路行政担当者はたちまち手討ちにされるだろう。いやいや、へたをすると鋸引きになるかもしれまへんで。民主主義の時代というのはありがたいものですな。