優雅な外国人労働者

 従業員数300人ほどの製造業の社長から面白い話を聴いた。
 その人によれば、現在、10%ほどがブラジル人労働者で、平均で時給1500円を派遣会社に支払っているという。中間でどの程度ピンはねされているかわからないが、それでも1000円くらいは貰っているだろう。
 社長は言う。
「今、働いてくれているブラジル人は質がいい。ここまでにするのにずいぶん時間がかかった」
 10年前は、採用しても箸にも棒にもかからない場合が多かったそうだ。雇っては辞めさせ、また雇っては解雇するようなことが続いたという。
「今のメンバーは長期に勤めている外国人ばかりで、社のシステムも理解してくれて私の拙いポルトガル語でもきちんと動いてくれる」
 それでも3年働くと必ず帰国をするらしい。そして1年ブラジルで暮らすと、また、電話を掛けくる。
「シャチョさん、またハタラキタイ、シゴトあるか?」
 もちろん会社は慢性的な人手不足なので、優秀な労働者の場合「すぐに来い」ということになる。大半のブラジル人がこの3勤1休パターンを辿るのだ。
 なぜか?それは、日本で3年働くとけっこうな金が溜まる。これを持って帰国すれば、ブラジルで土地を買い、家を建てて、1年豪遊できる。金が尽きると、再来日して3年働く。また1年のバケーションをとるために母国に戻り、家を増築して、家電を充実させ、しっかりとリフレッシュして日本に働きに戻るわけだ。
 日本で働くといっても、某国のように強制労働を強いられるわけではない。トヨタカレンダーに沿って週休2日、年末年始、ゴールデンウイーク、お盆休みもきっちりと保障されている。それにワシャの町の北部にはブラジル人コミュニティが形成されて、ポルトガル語で日常生活が充分営めるようになっている。ブラジルでは考えられない手厚い待遇で何不自由なく3年間を働いて、その上1年の休暇がついてくる。素晴らしい労働環境だとは思いませんか?

 かたやワシャらはどうだ。朝は早くから、夜は遅くまで、その上、土日まで出勤して馬車馬のように働いている。ここ何年も連続休暇などとったことがなく、家のローンや子どもの教育費が、日々、身を細らせていく。
 件の社長ですら、雇用しているブラジル人がうらやましいという。どこかおかしくないだろうか。