高校に行った

 昨日、とある県立高校にでかけた。この地域では進学校で名が通っており比較的偏差値の高い生徒が揃っている。来週早々に全校生徒の前で一席ぶってくれというオーダーがあって、その下見というわけだ。
 この高校はワシャの母校ではない。ワシャが高校3年生の時に新設された。それから長〜い年月を経て、樹木も育ち、校舎にも年輪が刻まれて、落ち着いた雰囲気になりましたな。
 そんな感慨にふけりながら、講演会場となる体育館に入った。そこは、ひんやりと、静まりかえっている。フロア材に染み込んだ若者たちの汗が臭う。決して嫌な臭いではない。青春の時を思い出させる懐かしい臭いだった。

 ワシャは100年ほど生きているが、「人生の中でどの時期が楽しかったか?」と問われれば、間違いなく「高校時代」と答えられる。あの3年間はいろんなものが凝縮されていて、大変だったが面白くもあった。
 でもね、その一番楽しい時代の痕跡をワシャは失ってしまったのだ。かつてのワシャの学び舎は中心市街地にあった。そのためにずいぶん手狭で、ワシャが卒業した後に郊外移転されてしまったのじゃ。だから移転先の学校にはなんの思い出もありゃしない。
 ワシャたちの思い出が刻まれた校舎は取り壊され、グランドは新たに造成され小学校になってしもうた。だからかつて母校のあった場所にはなんの跡形もない。寂しー!

 お邪魔した高校はテスト期間中とやらで、学校全体がしんとしていた。そのために生い茂った樹木を渡っていく風の音がよく聞こえる。誰もいない校庭を眺め、思わず、「少年老い易く学成り難し 一寸の光陰軽んずべからず 未だ覚めず池塘春草の夢 階前の梧葉すでに秋声」と朱熹の詩を口ずさみましたぞ。
 ううむ、身につまされるわい。