男はタフでなければ

 世の中の流れが早すぎる。赤城徳彦農水大臣(当時)がでかい絆創膏を顔に貼って、定例閣議後の会見に現れ物議を醸し出したのは、ずいぶん昔のような気がするが、わずか2ヵ月前のことでしかない。
 10日前に上京した際に、赤城さんと同級生だった人の話を聴く機会を得た。その人が語るには、赤城さんというのは気の小さい繊細な人物で、ストレスが溜まるとすぐに吹き出物が出てしまうようなガラス細工のような人なんだそうな。だからテレビで絆創膏を晒したときも「ああ、またいつもの症状が出たな」と思ったそうだ。
 昨日、その赤城大臣に肩入れをしていた安倍首相が辞任の記者会見をしていた。ヘロヘロだった。この人も繊細な神経を持つ普通の人だったんだろう。

 渡辺淳一はこう言う。
《一つだけはっきりしていることは、さまざまな不快感をのみ込み、無視して、明るくおおらかに生きる、そんな鈍感力を身につけた人が集団の中で勝ち残るということです。》
 歴代の首相をご覧なさいよ。頭は悪いが鈍感力だけは人一倍という人材の宝庫ですぞ。例えば森喜朗、蛙の面に硫酸をかけたってびくともしそうにない。小泉さんだって鈍感そうだし、村山トンちゃんなんか、神戸で大災害が起きているのに、全然気づかないほど鈍感だ。中曽根以前の首相なんて軒並み厚顔無知、傍若無人な鈍感男ばかりである(これは褒め言葉)。
 ある意味、位人臣を極める人というのは、民草と同じ種類ではいけない。1億2000万の人間を率いるリーダーなのである。言ってしまえば、大衆の病気である鬱病などに罹っていては困るのだ。安倍さん、いい人なんだろうけど指導者の脆弱さを露呈してしまった罪は重い。