狂犬のいない日々

 この秋場所はなかなかよかった。横綱白鵬が初日に躓いたときには、どうなることやらと心配したが、その後、盛り返して13勝2敗ならまずまずの成績だろう。関脇、小結の強い場所は面白いと言われるが、今場所は関脇安美錦、小結安馬の「安安コンビ」の活躍で大いに盛りあがった。不甲斐ない大関陣は毎度のことなので、話をするのも嫌なんだけど、千代大海9勝、琴欧州8勝という成績は大関の成績じゃない。魁皇については、曙や貴乃花の同期だもの、もう引退してもいいよね。琴光喜は、嫁が応援しているのであんまり言えないけど、横綱大関戦が二番しかないのに5敗はえらかろう。大関陣よ、もそっとピリッとしろよ。
 不甲斐ない大関を尻目に、下位から盛り上げてくれた功労者がいる。幕尻14枚目新入幕の豪栄道である。11日目まで10勝を挙げて横綱大関を押さえ優勝戦線のトップにいた。21歳の若武者は頭のよさそうな顔立ちと反応のいい運動能力を持っており、往年の北勝海を彷彿とさせるのだ。期待してまっせ。
 また、禁止されていた車の運転をして出場停止をくらったが、謹慎中にきちんと練習を積んだ旭天鵬が12勝3敗で最終日まで優勝争いに絡んだことは高い評価をしていいだろう。自分のしたことを自覚も出来ず、ただブータレてモンゴルに隠れてしまったバカと比較すれば各段に人格者である。すでに旭天鵬は日本に帰化しているし、そういった点からもモンゴルを代表する関取と言えよう。
 剥き身の暴力を誇示するバカがいないお蔭で静かな格調高い土俵が楽しめましたぞ。

 残念だったのは観客席に「相撲ジャーナリスト」の杉山邦博さんが客席に見当たらないことだ。たまたまテレビカメラのアングルから外れていて映っていないならいいが、バカ問題で注目されたことに対して自粛されているなら悲しいことである。来場所は杉山さんの顔を力士の肩越しに見たいものだ。
 ただバカ青龍は、永遠にカメラの中には戻ってきてほしくない。あんな狂犬がいなくたって充分に本場所は面白かったもんね。
「さらば朝青龍
 これを今場所の総まとめにしたい。