家庭と会社

 若い友人からメールが届く。開いてみれば9月22日に「第三子」が誕生したとのこと。いやーめでたい。
 だから、早速、お祝いメールを送る。以下は抜粋。
《因みに9月22日の誕生花は「スズガヤ」です。明治時代に鑑賞用の草花として渡来しました。成熟するとカラカラとかわいい音をたてます。この日に生まれた著名人は明治天皇吉田茂鈴木雅之カールスモーキー石井、緒方直人などがいます。歴史的な事柄としては、1189年のこの日に頼朝の奥州支配が始まりました。1844年にはオランダ王国書が江戸に到着しています。行事としては、福島県会津若松市で「会津白虎まつり」、東京都港区では「豊川稲荷大祭」、宮崎県では「天岩戸神社秋祭」が開催されるそうです。記念日としては「日本救世軍創立記念日」、「国際ビーチクリーンアップ・デー」というのがあります。「そんなの関係ねえ」と言われそうですが、明治33年秋に文部省留学生として英国に渡るため横浜を出発した夏目漱石は、9月22日の日記にこんなことを認めています。「二十二日(土)午後香港ヨリ海上六百四十一哩ノ処ヲ行ク」ほう、107年前の22日も土曜日だったんだ。てなわけで、兎にも角にもおめでとう。》

 この友人、優秀な男で、2年ほど親会社の東京本社に出向していた。充分に我社の将来を担っていく人材なのだが、なぜか、今、冷や飯を食わされている。
 それは彼の信条である「家庭が最優先」という考え方に因があるのかもしれない。彼は奥さんと子どもたちを心から愛しており、そのためにはすべてのものを犠牲にしようと決心しているのだ。彼のこういった思惑を、会社人間ばかりの今の上層部に理解することは困難だろう。遊び人のワシャだって48%くらい会社人間なので(嘘笑)、52%くらいしか彼のことを理解していない。でもね、それはそれでいいと思う。人それぞれの考え方があるんだ。出世なんか踏みつけにして、家族を大切にして、美味しい酒を飲んで、独立独歩できみの道を行け。

 福沢諭吉は『福翁自伝』の中でこう言っている。
《奥平の屋敷の中で立身出世しようとも思わない。立身出世の野心がなければ人に依頼する必要もない。眼中人もなければ藩もなし、さればとて藩の邪魔をしようとも思わず、ただ屋敷きの長屋を借りて安気に住居するばかり》
 福沢諭吉に負けるな、偉大なる家庭人。