秋至る

 午前4時30分、朝刊を取りに玄関をでると外気が冷やりとする。庭じゅうで虫が集いている。日中は暑くとも、朝晩はすっかり秋色になっていた。そういえば秋分だもの、当然と言えば当然ですけどね。
 朝、ワシャが書斎(物置ともいう)で、本を読んでおった。そのときに居間の方から「ギョエー!」という嫁の叫び声が聞こえた。ゴキブリでも出たか?はたまたナメクジでも踏んだか?ワシャはあわてて居間に飛びこんだ。
「どうした?」
「あれを見てくらさい」
 嫁はテレビを指差している。画面を見れば、中華航空チャーター便(ボーイング737−800型機)の紅梅の花マークが映っているではあ〜りませんか。報道によれば、《佐賀空港に20日午後到着した台北発の中華航空機の胴体下部に77センチの亀裂があるのを、同社の整備士が着陸直後の点検で見つけた。》と言うことである。
「まさにこの飛行機に乗りました」
と嫁は言う。
「きみが乗ったから亀裂が入ったのではないのか?」
 と疑義をただすと、パンチを顔面にくらってしまった。

 心配するんじゃなかった。すごすごと書斎に引っ込むと、再び本を開く。ちょうど窓から心地よい風が通ってくる。読み始めたのは夏目漱石の『彼岸過迄』だ。
 ああ、秋ですなぁ。