人柄がよい、人柄がわるい、と人は、人のことを、人別き(ひとわき)したがるものである(笑)。
人柄がよい人は、ワシャの周囲にも存在する。思いやりがあって、控えめで、しかし率先して仕事をし、いつのまにかその人のまわりに人が集まってくる。人の悪口を言わず、足を引っ張らず、大声を出すことなく、人を導く。春風のようなさわやかさをもった人物、そういう人は男女を問わず魅力的だ。
かたや人柄の悪い人もいる。自分より力があると見極めるやいなや、阿り、追従し、見下したなら、とたんに論い、批判し、口撃を加えてくる。
こんな事例を記憶している。ワシャの親戚の夫婦である。新婚旅行から帰ってきて、その土産を持参がてら挨拶に立ち寄った時のこと。
ワシャは親族の中でもかなりのうるさ型のオジサンということになっている。新婚の2人(といっても双方とも晩婚なのだが)は緊張して、居間に並んで緊張している。それでも、お茶を出して、小一時間ほどして酒に変えれば、夫のほうは、血のつながりがあるので、すぐに馴れてくる。妻のほうはというと、やはりワルシャワ一族に嫁してきた立場だから、なかなか本性を見せない。
でもね、ワシャぐらい世知辛い世間を世過ぎして世之介のように世慣れてくるとね、隠していても見えてしまうものがあるんですな(笑)。
その嫁、ワシャのことを「オジサマ」と呼ぶ。おいおい、ワシャは「様」で呼ばれるほどのバカじゃないぜ。こんなあばら家に住む中年のオッサンに「様」はねぇだろう。そして夫に対する言葉の端々に険がある。岡目八目ではないが、旦那を卑下する意識がよ〜く見える。その後、何度か顔を合わせる機会があったが、やっぱり最初の印象は拭えなかった。人柄のハチャメチャなワシャが言うのもなんだけれども、やはり「人柄がわるい」ということなのだろう。それからその夫婦とは縁遠くなった。何年も過ぎて、傍からその嫁の噂を聴いた。どこかの会社で窓口の担当をしているらしいが、とにかく評判の悪い担当らしい。ワシャにそのことを告げた知人は、ワシャの関係者とは知らなかったわけだが、ワシャは「さもありなん」てなもんですわ。
ここからが本論である。人柄のいい人はいる。しかし、その人だって聖人君子ではない。少しばかりのずるいところもあるだろうし、きっとどこかにイヤらしい性格を微量に含有している。逆に、人柄のわるい人間にも、少しばかりはいいところもあるだろう。ワシャにだってちょっとぐらいはあると思いたい(笑)。人柄っていうのも「割合」ではないのかなぁと思う。櫻井よしこさんだって、曽野綾子さんだって、完璧じゃない。もちろんご両所の完成度は高いけれども、根っからの善人も根っからの悪い奴もそうそういるものではないだろう。量の差はあれ、人にはいいところもあれば悪いところもある。そう思うと少し世間が生きやすくならないかなぁ。
ワシャの友達は、そういう優しい気持ちでワシャに接してね。