災厄の人々

 人材には4種類あるという。最上級が人財である。そしてオーソドックスな人材があって、人在、人罪と続く。
 この最下級の人罪にやられた。
 現在、ワシャのセクションがてこ入れして、某部門のプロジェクトを立ち上げようとしている。ここ数ヵ月打ち合わせを進めてきた某部門の担当者は優秀な男なのだが、この上に乗っかっている上司がいけない。局長、次長、課長の3人がおぶさっているのだが、これが人罪なのである。プロジェクトの事前根回しがない。重役会議でのプレゼン能力がない。幹部の質問に即答ができない。かといって事前勉強を必死にした形跡もない。ないない尽くしで、会議は紛糾し、プロジェクトは暗礁に乗り上げてしまった。挙句の果てに逃げ場を失った人罪どもは、責任をワシャのセクションに擦りつけたのである。
 会議の翌朝(昨日)、幹部の一人から呼び出された。そして「どうしてお前が説明にこないんだ」と言われたが、行けるものなら行ってますがな。会議に出したいならもうちょっと偉くしておくんなさいよ。
 まぁそんなことを言っていてもしょうがないし、安倍さんのように辞任するわけにもいかないから、会議の詳細をその幹部から確認して、プロジェクトに反対表明をした役員の名前を聞き出した。
 前日から一睡もしていなかったが、そんなことは言ってられまへんで。状況を修復するためにプロジェクトの資料を抱えて担当者と一緒に走りまわりましたぞ。もともとしっかりしたプロジェクトなので、担当者が説明し、ワシャが補足すれば、大方の役員は納得してくれた。やれやれだ。社外役員も何人かいたので、車で走っているとついうとうとしてしまう。「お疲れですね」とハンドルを握る担当者が言うが、返事をする気力もないわい。
 夕方、帰社すると、某部門の三人がうちのセクションに来ており、うちの上司と雑談をしていた。眩暈がした。あんたらがもう少しだけ勉強して、会議に臨んでいれば、こんな労力を使わずに済んだのだ。
「あの部門の管理職は能無しだな」と言った厳しい幹部の表情が脳裏によみがえった。
 疲労困憊の1日じゃった。やれやれ。