芝口南西久保愛宕下界隈

 先の土曜、日曜で上京し日垣さんのセミナーに参加した。汐留シオサイトにあるホテルヴィラフォンテーヌを会場にしてエキサイティングな講義を受けたのだ。
 それにしても東京の変貌は著しい。汐留操車場跡地は、すっかり近未来都市に変貌している。JR新橋駅を降りてSONYPLAZAを歩きましたが、その昔、大阪万博のシンボルゾーンを歩いているような錯覚に陥った。ことにホテルヴィラフォンテーヌの正面玄関ロビーは圧巻だ。広さ500坪、高さ40mの吹きぬけである。「STARWARS EPISODE1」の大会議場のようだ。

 宿泊は、シオサイトから徒歩で15分ほどの御成門駅近くのホテルにとった。周辺には、芝増上寺儒学者佐藤直方の墓所である瑠璃光寺、家康の政治顧問だった金地院崇伝の南禅寺など、江戸の面影を残す寺社が立ち並んでいる。
早朝、ベッドでまどろんでいると、厳かな鐘の音が伝わってきた。5時30分、増上寺の鐘である。いやぁ、都心の真ん中で聴く古刹の鐘の音も、なかなか風情がありましたぞ。
 その鐘に誘われたというわけでもないのだが、少しお江戸を歩いてみたくなった。早々にチェックアウトして、御成門交差点に出ると、そこから西を目指す。青龍寺光明寺、専光寺を経て、桜田通りを南に下る。飯倉交差点を左に折れて、瑠璃光寺、東京タワーを見上げながら南禅寺芝公園を抜けて、徳川家菩提寺増上寺である。今でも増上寺は広いけれど、往時の広大さは尋常ではなかった。その山内に地下鉄の駅を4つ包含してしまうほどである。
 境内地を抜けて、日比谷通りに出る。そこから北に上がって、港図書館入口交差点を左折し、愛宕下通りを北に向かう。途中、愛宕神社に立ち寄る。『東海道名所記』には《此の山上に登れば江戸中南海残らず見ゆ》とあるけれど、残念ながら、今は隣のビルの壁面しか見られない。でも、緑は充分にあって、そのお蔭で蝉の声が豪雨のように降ってきて、喧しいことこの上なかった。
 山を降りて、天徳寺の搭頭(たっちゅう)猿寺の杉田玄白の墓を見て、田村右京大夫上屋敷跡を経て、再び愛宕下通りに戻り北に向かうのだった。(つづく)