増上寺から浜離宮

 先週の日曜日は御成門近くのホテルにいた。ベッドが軟らかすぎてよく寝られなかった。どうせ起きているなら、散歩でもするべいと未明の街に出た。午前4時の東京である。それでも三河の片田舎と比べると明るいですな。御成門交差点から芝公園を右手に見ながら南へ歩く。江戸期にはこのあたりが増上寺の方丈(住持の居所)で、高速都心環状まで寺内だった。ざっと1km四方が増上寺とその搭頭(たっちゅう)の敷地だ。増上寺山門の石段に腰を下ろし江戸の時代に想いを馳せた……ええい!浜松町方面のビルの明りが邪魔をしてイメージがふくらまない。寒くもなってきたのでホテルに戻ることにする。途中のコンビニで焼酎を買いこんだ。宿に帰って、お湯割りでキュキューと二、三杯あおるとようやく眠気がさしてきた。ベッドは軟らかすぎるので、床にシーツを敷いてようやく眠りについたのは午前5時を回っていた。
 午前8時30分、無粋なアラームが鳴り響いた。前の人がセットしていたんだろう。解除しておかなかったので、起こされてしまった。歌舞伎座にゆくには少し早いが、3時間寝たので、朝の散歩をかねて出掛けることにする。
 早朝の日比谷通りを北に向かう。新橋四丁目の交差点の手前の辻を右に折れる。この道は浜離宮まで真っ直ぐに伸びている。10分も歩けば中の御門につく。菜の花や梅が満開だった。花の香りにつつまれて御亭山(おちんやま)の北のベンチで少し眠った。春の気配を感じながらうとうとする。これが気持ちいい。
 ふと、気がつけば10時を回っているではあ〜りませんか。そろそろ、歌舞伎座にむかわないといけない。もう少しのんびりしていたかったが、腰を上げて浜離宮をあとにしたのだった。