嗚呼、殉職

 今回の演習見学は悪天候のために犠牲が大きかった。
 まず、豪雨で荷物がやられた。快適な見学をするためにいろいろなアイテムを持参している。雨対策としてカッパ、荷物を守るためのビニール袋(ゴミ袋)、長袖シャツ(晴天の場合の日焼け対策、雨天の場合は防寒用)、帽子、タオル、本、メモ、筆記具、電子辞書、携帯電話、食料、飲料水、エアクッション、双眼鏡、ライト、何かと便利な大型目玉クリップなどが入っているんですな。
 当初から雨が降っていたので、ワシャはナップザックをビニール袋に入れるとそれをサンタクロースのように肩に担いだ。スタンド入りしてからは足下に置いていたのだが、それが甘かった。
 雨が止み、少し肌寒かったので長袖シャツを出そうとしたところ、おや?シャツが濡れているではあ〜りませんか。「なぜじゃ」と思って、ナップザックの中を確かめると、ビニール袋の底が破れていて、そこから水が侵入していたのだ。
「オーマイゴッ!」
 電子機器が水に浸かっては洒落になりません。ワシャは電子辞書や携帯電話を大あわてで取り出しましたぞ。少しばかり湿っていましたが底についた水には浸かっていなかった。助かった要因は、この2つの下で井筒俊彦イスラーム文化』(岩波文庫)とワシャの「万能メモ」が無残にもずぶ濡れになりながら、身を挺して機器類を守ったからである。
「うみ〜ゆかば〜み〜づくかばね〜」

 そして演習が終わり撤収作業に入った時のことだった。油断としか言い様がない。今までビニール袋の口を閉じたり、首に巻いたタオルが風で飛ばないようにしてくれていた大型目玉クリップがスタンドの隙間から落ちてしまった。GLまで3メートルはある。この高さではまず助かるまい。もちろん救助に向かいたかったが、スタンド下は立ち入り禁止区域となっており、侵入は板門店を越えるよりも難しそうだ。ワシャは同志の姿を確認すべく、スタンドの隙間から下を覗いた。おおお、草むらにキラキラと光るシルバーメタリックのボディがかいま見える。
「やま〜ゆかば〜くさむすかばね〜」