人種の坩堝

 いい加減にしてちゃぶだい。夕方、買い物に出かけた私鉄沿線(ワシャの町の北部地域)はもう日本ではなくなっていた。ブラジル国旗があちこちにはためいて、歩いているのはブラジル人、車に乗っているのはベトナム人、中国人は集団で自転車を漕いでいる。黒人も白人もインド人もアラブ人も、もちろん朝鮮人もいる。肩身の狭いのは日本人だけだ。
 スーパーからの帰り道、ワシャの車の前を紺色の日産マーチポンコツが走っている。運転席から煙草を挟んだ褐色の手が外に出ている。たぶんブラジル人だろう。交差点で停まるとその外人は煙草を路上に投げ捨てた。

 夜になって咳が止まらない。沖田総司と一緒の結核だろうか……咳止めも欲しいし、咽喉飴も欲しい。仕方ないので近くの大型チェーンの薬局まで自転車を走らせる。satoの「新トニン咳止め液」と第22回全国菓子博覧会名誉総裁賞受賞の「厄除 川崎大師 家伝せき止飴」を買って帰ろうとしたら、出口のところでブラジル人らしい若者2人とすれ違った。前の若者がカートを押している。後の若者がティッシュの5箱組パッケージを掴むとカートに投げつけた。ガッシャーンとかなり大きい音がして周囲の日本人は彼らに注目をする。2人は悪びれた様子も見せず(別に犯罪ではないので悪びれなくともいいわけですが)奥のほうへと進んでいった。

 町内にあるアパートが丸々1棟外国人居住区になっている。外国人たちは駐車場を借りたがらないので、その周辺は違法駐車だらけだ。たまたま薬局の帰りにその辺りに差しかかった。住宅地の細い路地の左側を遠慮がちに走る自転車を蹴散らすようにして爆音を轟かせる乗用車が負い越して行く。そして路上駐車をすると件のアパートに消えていった。
「お前ら!いいかげんにしろよ!!」と怒鳴ったつもりだったが、咽喉をやられているので声が出なかった(笑)。
 西尾幹二はその著書『「労働鎖国」のすすめ』(光文社)において、安易な外国人労働者の受け入れに警告を発している。サブタイトルにも「外国人労働者が日本を滅ぼす」と書く。無防備な田舎の愛知県三河地方はひたひたと外国人によって蝕まれているのであった。