ああ勘違い

 ワシャの読書のかたちは「併読」である。一度に何冊も並行して読み進めるのじゃ。ツボにはまると一気に読了するのだが、そうでない場合はチョビチョビとかじっては次の本、次の本と渡り歩く。飽きっぽい性格なのだろうか。
 こんなことがあった。平野啓一郎のエッセイを読んでいるときのことである。
《大分に講演に行って高校時代のサッカー仲間に世話になった。》
 と、書いてあった。
 23歳のときに『日蝕』で芥川賞をとった平野さん、ほう、サッカーをやっていたんだ。
《時間があるので臼杵まで足を延ばしたが、途中で彼が作っているサッカー場に案内してもらった。》
 友達にサッカー場を自力で造成している人がいるのか……
《再来年三月に大学を退官することになったので、その記念に自分用のサッカー場を造って後進の養成に老後を送りたい……》
 え、平野さんは1975年生まれで、今年32歳ですぞ。そのサッカー仲間が、退官?老後?なんだか話が噛み合わなくなってきた。表紙を返してしげしげと見れば、本は、板坂元『人生後半のための知的生活入門』(PHP文庫)だった。平野啓一郎『文明の憂鬱』(新潮文庫)だとばっかり思い込んでいたが違っていたんですな。若い平野さんが語っていると思っているから、「退官」「老後」などという言葉に戸惑ってしまったというわけだ。あーびっくりした。
 
 こんなこともあった。ある人が漫画家の小林よしのりさんとの対談でこんなことを言っている。
《漫画表現のすさまじいエネルギーがありますが、それとともに言葉の巧みさも重要な要素になっていますね。》
 ほめている。
《小林さんは、会ってみるとぜんぜん傲慢じゃない。肩がいかっていないよね。》
《小林さんの漫画で育った世代に期待したいですね。》
 読み進めるうちに、違和感を持ったので表紙を再確認するのだが、やっぱり、佐高信さんの『日本への毒薬』(徳間書店)だった(笑)。あんまり、よいしょが多いので、よいしょ芸人の峰竜太かと思いましたぞ。いやー、13年前はよしりんにも媚びを売っていたんですな。やれやれ。