ハムレットまでいけなかった

 日曜日の朝のフジテレビ『ボクらの時代』が時折りおもしろい。今朝はその時折りのほうだった。樹木希林橋爪功小林稔侍、後期高齢者の名バイブレーヤーが揃った。若いネーチャンや小生意気なアンチャンの雑談など聞きたくもないが、人生を煮詰めて――橋爪さんは人生を「オデン」に例えたけれど――いい味を醸して生きている人の話は楽しい。
 
『AERA』の最新号に希林さんのインタビューがあった。編集部は全身ガンに冒されている希林さんに「死生観」を語ってもらいたかったに違いない。しかし、そりゃぁ希林さんだ。若い編集部あたりの思い通りになるわけがない。こんな話をし始める。
《ドラマ「寺内貫太郎一家」でおばあさん役をやったのは31歳のときだったわね。外見は老人を真似たけれど、心の中は30代のまま演じた。実際に70代になってみてどうかっていうと、全く同じ。何も変わらない。精神的な成熟なんてないわね。》
 人は成長しないんだと樹木さんは言う。
 ワシャも年齢を重ねてきてそう思う。クソガキだった頃とあんまり変わっていない。体力が落ちてきているのと、反射神経が衰えていることは実感しているので、実力行使には出なくなったが、それでも気概は相変わらず学生時代のままだ。
 話を少しもどす。
 編集部はそれでもなんとか「老後は怖くない」というテーマのほうに希林さんの話柄を持っていきたくて頑張ったんでしょうね。途中で2016年の宝島社の企業広告
http://www.sankei.com/life/photos/160107/lif1601070024-p1.html
「死ぬときぐらい好きにさせてよ」を記事中に挿し込んで、雰囲気づくりに努めている。でも、結局、樹木希林の死生観のようなものは語られずじまいでインタビューは終わった。『AERA』程度の記者では希林さんには太刀打ちできめえ。めでたしめでたし。

 話を大幅にもどす。
『ボクらの時代』の橋爪さんと小林さんである。ご両所とも75歳をこえてお元気である。その上にいい顔になられた。橋爪さんが希林さんにこう言った。
「稔侍はね、自分のこと格好いいと思っているんですよ」
 希林さんが「大したことないのにね」と答える。
 照れた小林さんはティッシュをとって鼻を拭って、それを橋爪さんのジャケットのポケットに入れようとする。
「よせよ、おまえはすぐにそういうことをする」
 と橋爪さんと小林さんが小競り合いを始める。まるっきり子供だった。

 そういえば先月、小林さんは愛知県までやってきて某所でロケをした。そこでサインをもらったんですぞ。残念ながら直接ではなかったけれど、映画「鉄道員」の本で、小林さんは「え、こんな本があったの?僕もすぐに買おう」とタイトルをメモしていかれたそうな。

 希林さんの「オフィーリア」の話から「ハムレット」に話を展開しようと思ったんだけど、『ボクらの時代』で書きすぎた。