ゾウガメ

 嫁と話していて、次に生まれ変わるとするなら何に生まれ変わりたいか、という話になった。嫁は、だんぜん『人間』がいいと言う。ワシャは、絶対に『ゾウガメ』がいいと言った。意見が合わない。
「ワシャがゾウガメにするんだから、おまえもゾウガメにしろよ」
と言ったんだが、
「ゾウガメは不恰好だから、嫌だ」
と譲らない。
「ゾウガメはなにも悩みがないんだぞ。ずーっとガラパゴスで青い空と海を眺めながら200年も生きられるんだぞ」
 と説得を試みるが、
「今でも悩みがない。それにガラパゴスで200年も生きたくない」
 と言うではないか。
う〜む、手強いヤツだ。仕方がないので、ワシャは奥の手を出した。
「どうしてもゾウガメが嫌だと言うなら、日垣隆『頭は必ず良くなる』(WAC)を貸してやらない」
 と宣言したのじゃ。前から嫁は『頭は必ず良くなる』を読みたがっていた。それを逆手に取ったわけだ。
 敵は悩んでおった。ゾウガメは嫌だけど、本は読みたい、そのジレンマと闘っているんですな。結局、嫁はガラパゴスを認めたのであった。勝った。

 しかし読み終わって「やっぱりゾウガメはイヤ!」と前言を翻したのである。ヒドイ!