新幹線七不思議

 東京に向かう新幹線の中のことである。まだしっかりと脳味噌が目覚めてなかったんでしょうな。ぼーっと車窓の景色を眺めていると、丸谷才一のエッセイに「新幹線七不思議」というのがあったのを思い出した。
その要旨はこうだ。丸谷さんは新幹線でいつも「なぜか席の隣人に恵まれない」、「車内で読書ができない」という。新幹線に乗ると必ずそうなるらしい。それを不思議だと書いている。
 以上のことをもちろん覚えていたわけではない。おぼろげに記憶していて、詳細は家に戻って調べて書いている。
 う〜む、確かに隣人には恵まれたことはないですな。でっぷりと肥えた中年のオヤジとか、耳から音を垂れ流しているいかれた若造とかね。まぁこっちも人のことは言えないんだけど、それでも読書はできるでしょう。
丸谷さんのエッセイの文末はこう結ばれている。
《七不思議のうち二つで紙数が尽きました。残る五つは御自分でお考へ下さい。》
 あらららら、丸谷さん、「七不思議」という題をつけておいて二つで不思議を止めてしまった。なんと中途半端なことか。しかたないので、その後をワシャが続けよう。
3、新幹線車内にいるガキはなぜかうるさい
 ワシャは、新幹線で家族連れに囲まれてしまうことが多い。複数のガキンチョのうるさいことと言ったらなかったねぇ。
4、おばさんの3人連れのおしゃべりは機関銃に勝る
 このガキンチョ攻撃に勝るとも劣らないのが、おばさんのおしゃべり連射である。甲高い分だけ耳に障ることこの上ない。
5、駅弁の封を切るのは必ず列車が動き出してからだ
 東京駅で駅弁を買って車内に持ち込んでいる人を見かけるが、どうしてみんなすぐに食べないんだろう。テーブルに弁当を置いたまま手持ち無沙汰に何かを待っている。そう新幹線が動くのをである。動き出すとおもむろに弁当を開いて食べ始める。みんな一斉にだ。
6、車内販売のコーヒーは不味い
 なぜおいしいコーヒーにしないんだろうか。未だかつて美味いと思ったことがない。なぜJRは改善しないんだろうか。
7、なのに買ってしまう
 判っちゃいるんだが、朝、新幹線に乗ると、ついつい買ってしまうんですな、これが。
 そんなことを考えていたら、ちっとも読書ができなかった。あ、丸谷さんの不思議「車内で読書ができない」が当たった。う〜む、丸谷さん、さすがだ。