明暗

 昨日、埼玉県川口市で交通事故が起きた。日課の散歩をしていた「小鳩保育園」の園児36人と引率の保母さん5人の列に大バカ野郎の車が突っ込んで2園児が死亡、15人が重軽傷を負ったという悲惨な事故である。
 ところで、この事故の詳報を聴いていて疑問が湧いた。それは園児たちの歩いていた側のことだ。テレビ報道でも、新聞でも、現場は幅員は6メートルで歩道車道の区別がない道路だったと報じている。いわゆる街区道路である。しかしなぜ園児たちは左側を歩いていたんだろう。昔から「歩行者は道路の右側を歩く」というのは常識ではなかったんだろうか。小学校のころに「廊下は右側を歩きなさい」と言われませんでしたか?
 この事故は道路の左側を歩いていた園児の列に、道路の左側を走行してきたバカが列後方から突っ込んで事故になった。もし歩行者が右側を歩いていたら、バカは電柱にぶつかって自爆して終わった事故だったろう。
「車は左、人は右」というのは実は意味がある。この通行方法を守れば背後から近づいてくる車両とは、ある一定の距離を置けるのだ。6メートル道路であるなら少なくとも2メートルは距離を保てる。これだけあればバカ車両が多少蛇行しても、巻き込まれずにすむ。その代わり対向車に近接することになるが、人間の耳目は前方に対して情報収集をするように造られている。後方よりも、前方に対して強く警戒をすることができるのである。前方によろよろ走る車両を発見すれば、警戒行動をとるでしょ。「危ない!」と声をあげたり、園児を庇ったり、あるいは車両に対して注意を促したりするだろう。これが後方からの接近に対しては、たとえその車両が蛇行していても、前方からの接近に比べて注意は散漫にならざるを得ない。ゴルゴ13が後方に人の立つのを嫌うのも、このことによる。

 歩いていたのが、右側だったか、左側だったか、これが明暗を分けたような気がしてならない。