中村屋!(続き)

 いやー、それにしてもいろいろ面白い歌舞伎公演だったわい。なにしろ体育館の床に直座りなんで、腰に悪いのなんのって、仕方がないので座布団を二つ折りにして尻に挟みましたがな。ワシャは胡座をかいているわけだが、踝が床に当たってこれまた痛くなってくる。踝の下にパンフレットや手帳を敷いてみるのだが、これも然したる効果はない。
 その上、一人前の席がやたらと狭いのじゃ。幕間に図ってみたが縦80センチ横65センチの空間しか占有できない。なんと0.52?uですぞ。昔の桝席だって四尺八寸×五尺もあったんだ。現在の面積に換算すると2.20?u、その四分の1だから0.55?uとなるから、昨日の席は昔の座より0.03?uも小さいのである。ということはパソコンのキー1個分(1.73cm×1.73cm)の面積ほど狭かったわけだ。どおりでせめえわけだぜ。
 悪いことは重なるものだ。幕間に前の席の小柄なご婦人が、大柄なオバさんと入れ替わった。随分と座高の高い女性だったが、そりゃぁ仕方がない。身長184cm(笑)のワシャの後ろの人だって随分と迷惑だろうから、それはお互い様だ。悪いことというのは、そのオバさんがニッとの帽子を被っていることだった。頼むから観劇に来る時には帽子など被ってくるんじゃないよ。
「あいすいません。その被り物をとってやっちゃぁくれませんか」
 と言おうとして、止めた。オバさんのキャップの裾からカールしたボリュームのある髪の毛が出ていたのである。あの帽子をとると恐ろしくでかいカーリーヘアーでも飛び出してきたら……と思いちゅうちょしたのだった。観劇に来るなら頭小さくして来いよ、オバさん。

 でも舞台のほうは勘三郎の奮闘でなかなか見応えがありましたぞ。
 ただ全国公立文化施設協会主催だから役者は揃っていませんでしたね。脇を固めるのが扇雀弥十郎亀蔵七之助くらいで、一等席15,000円もとるとは、ふてえ料簡だ。それでも名古屋のお客さんはスタンディング・オベーションまでして喜んでいたから、まぁいいか。これにはさしもの勘三郎丈も腰を抜かしておったわい。めでたしめでたし。チョーン(柝の音)