公務員が死んだ

 昨日、知り合いの公務員が死んだ。蜘蛛膜下出血だった。死に至る経緯はこんな流れである。
 25日(金)常連クレーマーが役場の環境保全の窓口に現れた。騒音の苦情を言いに来るしつこいクレーマーは52歳の課長補佐をつかまえてくどくどと苦情を言いたてた。
常連クレーマーたちは、自治体の行政マンが絶対に反撃をしないということを知っているから、定期的に役場に顔を出し、毎度同じクレームで「バカ野郎、クソ野郎、便所コオロギ!」と公務員に罵声を浴びせ、1時間から2時間程度、大声をあげてストレスの解消をしていくのだそうだ。
 クレーマーから吐き出されたストレスは、その相手である行政マンに蓄積をされていくことになる。相手をさせられる公務員はたまったものではない。
 環境保全の課長補佐は、クレーマーが意気揚揚と帰っていった後に頭痛を訴え、事務所で倒れた。同僚らが救急車を呼んで近くの総合病院に搬送したが手遅れだったという。
 確かにクソ公務員は少なくない。岐阜県庁で裏金を貯めていたのも公務員だし、飲酒運転をして橋上で追突事故を起こしたのも公務員だ。こいつらは重々責められるべきだろうが、ストレスを貯めこんで死んだ公務員は真面目な控え目な男だった。確かにクレーマーに目をつけられたのである。業務のどこかに瑕疵はあったのだろう。しかしそれが命を持って償わなければならないほどのモノだったのだろうか。
 今、市民が強くなっている。相対的に公務員の地位は下がってきた。それはそれでいいと思うが、相手の人格を全否定するような罵声を浴びせるというのはやり過ぎではないか。
 このケースがそうだったとは言わないが、役場にでかけると窓口で公務員に興奮して噛みついている人によく出くわす。口角沫を飛ばしているのはクレーマーで、その唾を浴びながら平身低頭しているのが木っ端役人である。
 いつも思うのだが、もう少し冷静に交渉ができないものだろうか。

 ワシャの友人で読書家の公務員がいる。そいつが言っていた。
「俺はクレーマーになんか負けないぜ。そんなカスのために命を落としてたまるかっていうんだ。家にはかわいい嫁さんと子どもが待っている。俺には家族を幸せにするという義務がある。クレーマーだろうがクレージーだろうが、どっからでもかかって来い!もらったストレスは倍にしてお返してやる」
 でもその友人も最近酒量が増えていると言う。お前は倒れるなよ。

「富士火力演習の人々」はまた明日と言うことで。