深泥池 その1

 昨日のNHKの番組「ふるさと発」で京都の深泥池(みぞろがいけ)の生態系について放送していた。
 京都市北区上賀茂にある沼で、物の本によれば《京都・岩倉両盆地をへだてる松ヶ崎の丘陵南側の谷間。地名の由来となった水底の泥土層は4mにおよび、46科71属113種の水生植物の群落(天然記念物指定)がある。かつて貴族たちの遊猟の地で、「太平記」にもしるされる。》とある。
 また、司馬遼太郎が『街道をゆく』の「竹内街道」の冒頭で、この深泥池について書いている。『増補俚言集覧』を引き合いに出して蓴菜じゅんさい)が繁茂していることに触れている。1971年、万国博覧会の翌年のことだった。
 それから35年が経過し、この水生植物の宝庫が今や壊滅の危機にあることを番組は伝えている。何種かは絶滅し、残っている種も絶滅危惧種となっているそうだ。これは植物だけの話ではなく、池の生物にも同様の危機が迫っているという。池の水面を覆い尽くさんばかりに飛翔していたトンボが消えてしまったのである。
 何故か。
 外来種と呼ばれる異常に生命力のあるモノどもの繁殖が原因なんだそうな。植物でいえば「セイタカアワダチ草」菊科の多年草で北アメリカ原産の帰化植物である。生物では「ブルーギル」これも北アメリカ産だ。淡水硬骨魚で、目先のことしか考えないクソ釣り人によって日本各地の河川湖沼に放されて、その生態系に壊滅的な打撃を与えている。ワシャはブルーギルブラックバスを故意に放流した釣り人は「死刑」でいいとすら思っているのじゃ。こいつらは日本の風土を殺した「殺人罪」なのである。
 こういうバカもいればまともな人々もいる。深泥池の危機に際して、京都大学や地元の人々が立ちあがった。古里の風景を守ろうと毎週2回8年間もブルーギルの駆除をし、3年前からはセイタカアワダチ草の刈り取りをはじめたそうだ。偉い。それでも根こそぎ刈り取らないと、すぐにその旺盛な繁殖力で繁茂、増殖するのである。この厚かまし外来種の前には、日本の控え目な生き物たちはあまりにも無力だ。なんとか深泥池を救いたい、そう思うのだった。
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