禅の庭

 禅の庭の美について枡野俊明師がこう言っている。
《禅の美は、「不均斉(ふきんさい)」「簡素」「枯高」「自然(じねん)」「幽玄」「脱俗」「静寂」です。「禅の庭」にはこれらが調和のなかで一つに溶け合って表現されています。それが「禅の庭」の凛とした佇まい、清々しい空気をつくり出しているのです。》
 つまり禅の庭は、つり合いが取れず、全体として整っておらず、削ぎ落とされ、シンプルで、老松の風情があり、巧まず、内に秘めた余韻があり、世俗から突き抜けた自由さと、内なる心の静謐と響きあうような庭……それが禅の庭ということらしい。
 ううむ……深いのう。ゴーン。

 禅の庭と言えば龍安寺ですわなぁ。あの石庭は、季節により、時間により、天候により、刻々と表情を変化させる。いつ行っても味わいのある庭でござる。龍安寺の石庭のコンセプトは、その名が示すように龍である。鏡容池(きょうようち)の鯉が三段の滝(龍安寺に入る三段の段丘)を登り龍になる。その龍の安住の棲家があの庭なのだった。
 方丈から石庭を眺めてごらん。まず庭に向かって右手に目を向ける。一番西の一群が龍の頭と目だ。その奥に、玉を握った右手(三群)と、左手(二群)が配される。龍は大きくうねって左奥の油塀の手前に四群があり、一番東に後足(五群)を置いて臥龍しているのである。
 禅の庭の7要素をしっかりと取り入れた名園でありますな。

 龍安寺と比べると少し「静寂」が薄いかも知れないが、迫力のある東福寺本坊の南庭もいい。また東西そして北にも趣のある庭が配されて、庭好きにはたまらないポイントである。
 金地院の鶴亀蓬莱の庭もいいし、西芳寺苔寺)の枯滝石組は日本の庭園史上の最高傑作と言われている。苔もこけこけして、こ結構な趣きになってくる。

 そろそろ花粉の季節がおわる。梅雨に入る前に京都に行きて〜。