怪しい焼肉屋(前編)

 先日、仲間で焼肉屋に行く。焼肉チェーンの「カルビ○○」にいそいそと出かけた。
 着いて、席に案内されて、メニューを見ると、「1時間、飲み放題、1500円」と書いてある。仲間は呑み助ばかりなので「これにするべ」ということになった。座ってから5分ほど待ったがちっともオーダーを聞きにこないので、呼び鈴を何度も押す。かなりしてからオーダーを取りに、くたびれたような兄ちゃんがやってきた。何しろ喉が乾いているので、遅延の文句を言う前に「飲み放題、1500円」を頼む。
「この飲み放題は予約制なんスよね」
 と、兄ちゃん、ほざいた。
「予約って、フリーで入った客は注文できないじゃん」
「予約でオーダーしといてもらわないと……」
 すったもんだしていても埒があかない。
「もういい、好きな酒をオーダーしたほうがいい」
 ということで、飲み放題を断念しビールの生4杯注文した。「うへ〜い」と間延びした返事を残して兄ちゃんが消えたのが入店してから15分後だった。
 仲間の一人がテーブルに並んだメニューを確認して言った。
「この店のビールはサントリーだな」
「珍しいな」
 確かにこのあたりの居酒屋や料理屋ではキリンか朝日あるいはエビスと相場が決まっている。
「名古屋あたりのキャバレーやピンサロに行くとたいていはサントリーだけどね」
「なんでじゃ?」
サントリーのほうがバックマージンが大きいんだ」
「シェアがないからか?」
「そんなところだ。だからこの店は客に美味いビールを飲ませるということよりも、儲けを優先していると考えたほうがいい」
「そんなものか」
「見てろよ、へたをすると発泡酒みたいな味の生が出てくるぜ」
 と、話し続けること10分、生ビールはちっとも出てこない。どうしちゃったんだ、この店は。ビールを待つ10分はとても長い。客はワシャら以外に2組しかいないというのに……
 ようやく届いたビールは泡の消えた、口当たりが発泡酒のようなこくのないシロモノだった。(笑)

 傍若無人なこの店の話はまだまだ続きますぞ。