メドチ、ミンツチ、エンコウ、カブソ、ヒョウスベ、祇園坊主、サンボン、テガワラ……これが何かわかった人はかなり詳しい人だろう。
ガッコ、ガッタイ、ガッタラボシ、ガッタル、ガッタロ……だんだ語感が近づいてきた。
カアコゾー、カースッパ、ガータロ、ガーッパ、カッパ……そうです。これらは河童の異名なんですね。この他にも全国津々浦々その場所場所によって呼び方があるのですが、すべて河童のことなのです。これほどまでにこの妖怪は人間の身近にいる存在なのですね。
先月末に埼玉県ふじみ野市の市営プールで7歳の女児が吸水口に吸い込まれて亡くなるという痛ましい事故が起きた。どうしてプールに河童が出ないと管理者も親も思いこんでしまったのだろうか。プールにも河童は出没する。たまたま河童はプールの水の中で人間の隙を窺いながら遊泳していたんだろうね。でも叢も茂みもないから手の出しようがなかった。そこで吸水口のアルミ製の蓋を見つけたんだ。がたがたと緩んでいる。河童は器用なやつじゃないから蓋の格子に掴まってがたがたと揺すったのである。もともとメンテナンスが悪いからあっけなく蓋は外れた。あとは犠牲者が近づいてくるのを吸水管の中で待っていればいいだけだ。
もし管理者に河童を畏れる気持ちがあれば、河童がもっとも目をつけやすい吸水口の蓋を針金で留めたままで放置するわけがない。また親だって河童はどこの水の中にもいるんだと思えば7歳の子供を河童のいる水中に放置して水から上がるなどということはしなかっただろう。
平成17年、全国で河童の犠牲者は825人を数えた。この夏も連日水難事故の記事が社会面を賑わせている。くれぐれも言っておく。水辺には河童が潜んでいる。河童を畏れ、河童に注意しろ。