海老蔵という至宝に手を出すな

 偉い!
 さすが海老蔵、まだ傷も癒えないというのにバカマスコミの前に立って、きっちりと記者会見に応じた。潔いではないか。
http://www.chunichi.co.jp/chuspo/article/entertainment/news/CK2010120802000160.html
  そして、よかった!
 海老蔵の顔に、とりあえず外傷らしきものは見当たらない。至宝に傷がつかなくてよかった。海老蔵にどんな非があろうとも、歌舞伎役者の顔を攻撃したチンピラを許すわけにはいかない。
 なんだかチンピラサイドには、関係者という胡散臭いのが登場し仕切り始めているという。この胡散臭男が、マスコミに「関係者によりますと……」という海老蔵に不利な情報を流し、また警察との間にはいってチンピラの逮捕を遅らせる動きをしているらしい。
 チンピラだか、元暴走族のリーダーだか知らないが、海老蔵に殴られたと言い出した。その傷を治療したという医者もテレビに登場して「海老蔵の傷よりひどかった」と証言していたが、そんな傷、どこで負ったものだかわかるものか。
 マスコミや無責任なコメンテーターは、海老蔵を元暴走族のチンピラと同格のようなつもりで批判しているが、海老蔵梨園の御曹司である。六本木辺りのアンダーグラウンドで這い回る犯罪者とは元々育ちが違うんだ。
 梨園に育った若様である。酒の席でわがままな態度に出ることもあるだろう。横柄な口もきくだろう。でもね、それは世間知らずゆえのものであり、乳母日傘で育てられたお坊ちゃまなのだから仕方がない。庶民と同じ物差しで測ろうとしても、それは無理な話というものだわさ。
 生まれながらの若様は、精神構造そのものが庶民とは違う。いくらいきり立ったって、暴力をふるうわけがない。そもそも六本木のならず者と人間の種類が違う。
 歌舞伎の役で言えば、両者の実力差は、海老蔵が「文七元結」の文七で、ならず者は「暫(しばらく)」の鎌倉権五郎景政くらい違う。
海老「おい、おれは海老蔵だよ。おれの酒が飲めないの?」
 御曹司は平時に強がる。そのぐらいのことは世間知らずだから言ったかもしれない。

 しかし、元暴走族のリーダーだか何だか知らないが、そいつが酔いつぶれてしまって、その舎弟のならず者が、
「しばらくしばらくしばらくーっぷ、てめぇ、リーダーに何をしやあがった。殺すぞ!」
※このセリフの冒頭部分のわからない人は、歌舞伎の「暫」を見てね。
と割って入って、海老蔵の胸倉を掴んで、ゴツンゴツンと何発かくらわせればもう勝負はついたも同じだ。喧嘩慣れしたヤツのパンチは効く。今まで殴られたことのない若様海老蔵が、命より大切な看板である顔にパンチをくらえば、もうお手上げだったろう。戦意喪失、すぐに白旗を掲げただろう。
 とにもかくにも海老蔵が反撃することは絶対にありえない。人に対して横柄な態度はとれても、相手に手を上げるというそういう育ち方をしていないから「人を殴る」などという行為そのものを知らなかった可能性すらある。
よしんば喧嘩の方法を知っていたとしても、おそらく手は出さなかっただろう。それは、背負っているものが、そのチンピラと違いすぎるからである。チンピラは警察に逮捕されたってびくともしないだろう。奴らにとって前科は勲章だ。「海老蔵を叩きのめした男」として六本木ではちょいとした顔になるだろう。
 しかし、海老蔵のほうが手を出して傷害罪で引っ張られたとなれば、これは大変なことである。おそらく海老蔵は廃業になるだろうし、団十郎もそのままでは済まない。あるいは歌舞伎界そのものに大きな傷がつく。興行主の松竹にも影響だ出るだろうし、なによりも数百年続く市川宗家、歌舞伎の歴史の汚点となることは間違いない。
 そんなことは海老蔵が誰よりも知っている。暴行を受け、その暴行で死ぬかもしれないが、それは海老蔵という個人の犠牲で済む。しかし、反撃をして相手を傷つけるということは歌舞伎という文化の過去にも現在にも未来にも大きな影響を出すことであり、酔っていたとはいえ、そこまで海老蔵はバカじゃない。そのことゆえに海老蔵が手を出したとは考えにくいと考えるワルシャワであった。