怒れる男

 ヘンリー・フォンダ主演の「十二人の怒れる男」という映画がケーブルテレビでやっていた。映画ファンならそのストーリーを説明する必要もないほど有名な映画だ。それでもちょいとだけ復習のつもりであらすじを書いておこう。
 ニューヨークのスラム街に住む少年が父親を刺殺した容疑で逮捕された。このため12人の陪審員が集められて少年の「有罪」「無罪」について喧々諤々の議論を巻き起こすというものである。
密室劇の白眉といっていい。
 この陪審員たちはニューヨークで健全に生きる普通の人々だ。11人の男がネクタイをしており、それぞれがジェントルマンで聞き分けのいい良識人だった。
この映画は1957年に作られている。ほう、50年ほど前になるのか。まだアメリカにも日本にも良識のあった時代だったね。

 先週のことだ。郊外の複合娯楽施設でのこと、ワシャは本屋から出てきて、入口で5歳くらいの少年を連れた夫婦とすれ違った。このくらいの年齢がかわいい盛りだよな。ワシャはふと息子の幼いころを思い出してしまった。
 その時だ。
「ベッ」という蛙をつぶしたような音をたてて、若いオヤジが痰を吐いた。
 おいおい、子どもの前でそれはないだろう。

 最近、特に感じるのは、質の悪い日本人が増殖しているのではないかということである。毅然とした道徳観に裏打ちされた紳士、淑女が激減しているように思えてならない。

 これも先週のこと、自宅近くで散歩していたらワシャの前を歩くカップルの女のほうが、突然「ベッ」と植込みに痰を飛ばしたのだ。この女は外人だった。書いていて気持ち悪くなってきましたぞ。
 いつからワシャの町はスラムになってしまったのだろう。トヨタ関連の下請けが多いこのあたりでは質の悪い外国人が多くなった。

「日本人も外国人も、最低限のマナーを守れ!良識を取り戻せ!」
 ホワイトシャツ姿のヘンリー・フォンダたちを観ていて、そんなことを思いましたぞ。